筆界特定を行った事案についての裁判例の動向(法務省民事局付検事・民事第二課担当者)(判タ1429号40頁)

1 筆界特定の年間申請件数は、毎年2500件前後と安定して推移している。
2 筆界特定手続は、対審構造ではなく、対象土地(筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する土地)の他方の所有者は、相手方とはならない(関係人として意見提出等の機会は保障されている。)。このことは、申請人から見れば、隣人に対して訴えを提起する必要がないため、心理的な負担も緩和されるという点で、訴訟と比較したときの利点としてあげられよう。
3 また、申請人は申請手数料と測量費用を負担すれば足り、訴訟手続に比べて申請人の負担が軽い上、筆界に関する専門的知識を有する者による判断が示されるという点も、筆界特定制度の大きな利点であるということができよう。
4 筆界確定訴訟の継続中に、裁判長から筆界特定手続の利用を打診されたことをきっかけに筆界特定がなされた事案について、(1)訴状添附の図面では基点の記載がなかったが、筆界特定手続によって現地再現性がある図面が作成された、(2)法務局、区役所、図書館、近隣土地の所有者など、多方面から職権で独自に収集した資料、各種図面に顕れているポイントや筆界調査委員において現地調査した結果を別の図面に落とし込んだ新規作成図面など、多岐に渡る資料が収集・作成されており、これが文書送付嘱託により取り寄せられ、訴訟で活用された、(3)筆界特定書において丁寧な認定判断がされており、参考になったとの声を聞くことができた。
5 仮に筆界特定の後に筆界の確定を求める訴えが提起されたとしても、裁判所は筆界特定手続の記録の送付を嘱託することができる(不登法147条)。