使用貸借の終了(使用収益をする之に足りる期間の経過)(民597?但書)(判タ1499号64頁)

1 昭和45年最判及び平成11年最判の摘示した考慮要素についての考察
ア「経過した年月」
 裁判例においては、土地の使用貸借においては20年から30年の経過により、建物の使用貸借においては10年を超える期間の経過により貸主の明渡請求を認めている例が多くなっているといえそうである。
イ「無償で賃貸されるに至った特殊な事情」
ウ その後の「当事者間の人的つながり」
 著しい変化とは、長年月経過による通常の経年変化(例えば交流の疎遠化や代替わり)を超える程度の変化をいうものと解される。
エ「土地使用の目的、方法、程度」
 この「目的」は、当該使用貸借契約の目的、前提又は原因を指す。
オ「貸主の土地使用を必要とする緊要度」
カ 考慮又は強調すべきではない要素
(ア)建物が朽廃又は存続しているか
(イ)使用貸借契約が無償契約であること
(ウ)借主側の必要度
2 平成11年最判以降の裁判例について
 土地が無償で賃借されるに至った特殊な事情を認定することなく、長年月の経過と人的つながりに著しい変化が生じたことを強調した上で、借主が使用する緊急性や必要性がないことなど借主に有利な事情を簡単に排斥して「使用収益をするのに足りる期間」が経過したと判断している裁判例があるが、昭和45年最判及び平成11年最判の立場からすれば相当でないと思われる。