金属スクラップ等の継続的な売買契約において目的物の所有権が売買代金の完済まで売り主に留保される旨が定められた場合に、買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が、売買代金が完済されていない金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張することができないとされた事例(最判平成30年12月7日第二小法廷判決民集72巻6号1044頁)

1 ➀目的物の所有権は代金完済まで売主に留保され、代金完済の時点で買主に目的物の所有権が移転するという構成(「留保構成」)

 ②売買契約によって売主から買主に留保所有権は移転され、買主から売主に留保所有権が設定されるという構成(「移転・設定構成」)

2 最高裁平成2264日第二小法廷判決(「平成22最判」)

 信販会社は留保した所有権を別除権として行使することはできないとしたもの

3 平成22年も最判平成29127日第一小法廷判決(「平成29最判」も、信販会社がする自動車の留保所有権について、留保構成を採るのか、移転・設定構成を採るのかは判文から明らかではない。

4 留保構成を採った場合には、代金完済までは売主から買主に目的物の所有権は移転しないことから、代金完済未了の目的物には譲渡担保権の効力は及ばず、売主は留保所有権を譲渡担保権者に主張できることになる。

 移転・設定構成を採った場合には、目的物について、買主を起点として、売主への留保所有権の設定という物権変動と譲渡担保権者への集合動産譲渡担保権の設定という2つの物権変動があると捉えることになる。したがって、集合動産譲渡担保権につき特例法上の登記がされた後に、売買契約の目的物が引き渡された場合には、譲渡担保権者が常に優先することになると考えられる。

5 本件は事例判決。売買契約において所有権留保を定める条項は、所有権留保の目的物の範囲は完済を確保する売買代金債権の範囲について様々なものが想定されること考慮。

 本判決では、売主と買主との間の売買代金債権がすべて完済されるまで売買契約に基づいて売主が買主に引き渡したすべての目的物の所有権が留保されるとの定め(いわゆる根所有権留保の合意)がされた場合についてまで、留保構成をそのまま採るとは言えないように思われる。

 あくまで、転売の承諾は売買代金の資金を確保するためのものであり、これをもって移転・設定構成を採ったと解することはできない旨を判事したものと思われる。

6 平成22最判や平成29最判をはじめとする過去の判例を見る限り、留保構成か移転・設定構成という所有権留保の法的構成から結論を導き出しているのではなく、問題となる法的局面において考慮すべき種々の事項を踏まえつつ、局面ごとに判断しているようにもみえるところであって、それらの問題について本判決の判事内容から直ちに何らかの帰結が予想されることにはならないように思われる。