不動産競売手続において建物の区分所有等に関する法律66条で準用される同法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより配当要求債権について差押え(平成29年法律第44号による改正前の民法147条2号)に準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるための要件(最第二小判令和2年9月18日判タ1481号21頁)

1 不動産競売手続において建物の区分所有等に関する法律66条で準用される同法7条1項の先取特権を有する債権者が配当要求をしたことにより、上記配当要求における配当要求債権について、差押え(平成29年法律第44号による改正前の民法147条2号)に準ずるものとして消滅時効の中断の効力が生ずるためには、民事執行法181条1項各号に掲げる文書により上記債権者が上記先取特権を有することが上記手続において証明されれば足り、債務者が上記配当要求債権についての配当異議の申出等をすることなく売却代金の配当又は弁済金の交付が実施されるに至ったことを要しない。

2 本件は、マンションの団地管理組合法人であるXが、マンションの専有部分を担保不動産競売で取得したYに対し、本件建物部分の前の共有者が滞納していた管理費等の支払義務をYが承継したとして、その管理費等の支払を求める事案である。

 民事執行法51条1項に基づく配当要求をしたが、当該強制競売の申立ては、同年7月に取り下げられた。Yは、担保不動産競売により、本件建物部分を取得した。

 Yは、滞納管理費等の債権の一部は時効消滅した旨主張している。

3 一般の先取特権を有する債権者がする配当要求については、執行裁判所が、一般の先取特権の存在を証する法定文書の存在を認め、当該配当要求を却下せず、適式な配当要求があるものとして、差押債権者及び債務者にその通知をするなど、強制競売手続又は担保不動産競売手続が進められるという結果、あるいは、執行裁判所にそのような法定文書が提出されたという結果が、権利を明確にしたとみることができ、権利確定の要素としてはこれをもって足りると解することができる。

4 区分所有法7条1項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、一般の先取特権である共益費用の先取特権民法306条1号)とみなされる(区分所有法7条2項)。

5 上記配当要求をした上記債権者が配当などを受けるためには、配当要求債権につき上記先取特権を有することについて、執行裁判所において同法181条1項各号に掲げる文書(以下「法定文書」という。)により証明されたと認められることを要するのであって、上記の証明がされたと認められない場合には、上記配当要求は不適法なものとして執行裁判所により却下されるべきものとされている。

6 法定文書より上告人が区分所有法66条で準用される区分所有法7条1項の先取特権を有することが本件強制競売の手続において証明された否かの点について審理することなく、本件配当要求債権及びこれらに対する遅延損害金の支払請求に関する部分を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。