居住用不動産の使用貸借において、借主が近隣に対する迷惑行為を反復継続し当該不動産をその拠点として使用するなどした結果、貸主との信頼関係が修復不能な程度に破壊されたとして、使用貸借契約の解約が有効とされた事例(判タ1545号96頁)

令和7年6月4日判決

大阪高等裁判所

 

「使用貸借は、特別な人的関係を背景として行われ、自己の所有する物の使用・収益を好意で許容するのが通常である。それゆえ、その人的関係が破壊に至った場合等、使用貸借を終了させるべき場合が存在する。」(注民)

 

リーディングケースとなったのは、最二小判昭42.11.24民集21巻9号2460頁、判タ215号91頁

 

夫婦の一方が他方の名義の預金を引き出した場合の不法行為・不当利得の成否(判タ1542号45頁)

第3 裁判例の分析

1 概説

2 違法説

3 適法説

4 婚姻費用考慮説

5 財産分与考慮説(原則適法説、総合考慮説)

第4 不法行為・不当利得の成否の判断の在り方

1 試論

2 課題-準委任契約の終了に基づく受取物返還請求との関係

民事訴訟において、請求原因事実を認める旨の答弁をするとともに、一定額を支払う内容の和解の提案をしたことが、権利の承認にあたらないとされた事例 令和6年11月19日判決大阪高裁(判タ1539号50頁)

本判決の判断

本判決は、請求原因事実を認めることは、消滅時効などの抗弁を主張することと両立するものであり、続行期日で抗弁を主張することが許されないとはいえないから、請求債権の存在を認めたと評価することはできず、また、和解は、当事者が互いに譲歩することが前提になっているから、被控訴人が一定額の支払を内容とする和解の提案をしたからといって、法的な支払義務の存在を認めたことには直ちにならず、和解が成立して初めて和解契約上の債務を承認するというのが当事者の合理的意思に合致するなどとして、被訴証人が、請求原因事実を認めていたことに加えて、一定額を支払う内容の和解の提案をしたことによっても、本訴請求債権につき権利の承認をしたとは認められないと判断し、消滅時効の抗弁を認め、控訴を棄却した。

 

調停手続や民事訴訟における和解手続において、「債務者から一部支払の調停案あるいは和解案の申出をすると、それが承認として更新あるいは援用権の喪失となるというのでは、債務者はこの不利益をおそれて、一切の譲歩案の提示をしなくなる。これでは調停あるいは和解手続きそのものが成立しない。」との懸念も示されている(酒井廣幸『民法改正対応版 続 時効の管理』225頁)。

 

 

 

 

東京地裁倒産部における近時の免責に関する判断の実情(令和版)(判タ1518号5頁)

本稿と同様のものとして、原雅基「東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情」判タ1342号4頁、平井直也「東京地裁破産再生部における近時の免責に関する判断の実情」判タ1403号5頁が存在する。本稿は、その続編である。

 

原則として、法人と法人代表者は別の法人格であり、法人の破産事件と法人代表者の破産事件も別の事件であるから、代表者が、法人の破産手続において不適切な行為や義務違反行為をしても、それをもって、直ちに代表者個人の免責不許可事由にあたると認定することはできない(東京高決平2.12.21東京高等裁判所(民事)判決時報41巻9~12号106頁)

もっとも、上記のような法人の代表者としての不適切な行為を、代表者個人の破産財団との関係に落とし込んで、免責不許可事由があると説明できる場合もあり得る。(判タ1518号16頁)

連帯しない共同保証人の分別の利益については、単純保証人の主張を要せず、そのことを知らずに単純保証人がその負うべき分割後の保証債務額(負担部分)を超えた弁済をしたときは、その超えた額について不当利得が成立するとした事例(判タ1516号125頁 令和4年5月19日札幌高裁判決)

1 分別の利益について、実体法上、単純保証人からの主張は必要ではなく、保証債務は当然に分割される。

2 訴訟手続上は、分別の利益はその利益を享受すべき単純保証人からの主張を要する(全額の保証債務履行請求に対する抗弁となる。)とするのが通説実務である。

3 本判決は、単純保証人が、分別の利益を知りながらあえて自己の負担部分を超えて弁済した場合には主債務者に対する求償権が発生し、そうではなく、分別の利益を知らずに自己の負担部分を超えて弁済した場合には弁済受領者に対する不当利得返還請求権が発生するという理解に立つ。

4 また、利得者の悪意者性について、本判決は、貸金に係る過払金返還訴訟における一連の最高裁判例を踏まえたと思われる(法律上の誤解をしたことについてやむを得ないといえる特段の事情の有無を判断要素とする。)。

5 本判決は、不法行為について、その当時の状況に照らして社会通念上著しく相当性を欠くとはいえないとして、その成立を否定したが、これは過払状態に陥った後に貸金業者が約定の弁済を請求したことの不法行為性について判示した最二小判平29.9.4判タ1308号111頁を踏まえたものと思われる。