2018-01-01から1年間の記事一覧

区分所有建物の管理組合は、区分所有建物の共用部分について、民法717条の占有者に当たらない(東京高判平成29年3月15日・判タ1453号115頁 原審:前橋地裁高崎支部平成28年1月19日)

1 区分所有建物の共有部分については、管理組合は民法717条の占有者には当たらず、区分所有者の全員が民法717条の占有者には当たる、とするのが立法担当者による解説であり、本判決も同じ考え方によったものと思われる。 2 本判決は、「敷地及び共用部分等…

建築訴訟の審理モデル~追加変更工事編~(判タ1453号5頁)

1 審理モデル(追加変更工事編、瑕疵編、出来高編)は、今後3回に渡って本誌に掲載される予定である。 2 追加工事の要件事実 ①当該工事が追加変更工事であること(追加性) ②施工合意 ③確定代金額の合意 ③´a有償合意(有償性) b相当代金額(相当性) ④⑤完…

抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合における当該抵当権自体の消滅時効(判タ1450号40頁)

1 破産法253条1項本文に規定する免責の法的性質については、自然債務説が通説であり、判例も自然債務説を前提としていると解されている。 破産手続によらないで行使することができる別除権(破産法2条9項、65条1項)が免責の効力を受けないことは、当然のこ…

使用貸借の終了(使用収益をする之に足りる期間の経過)(民597?但書)(判タ1499号64頁)

1 昭和45年最判及び平成11年最判の摘示した考慮要素についての考察 ア「経過した年月」 裁判例においては、土地の使用貸借においては20年から30年の経過により、建物の使用貸借においては10年を超える期間の経過により貸主の明渡請求を認めている例が多くな…

民法597条に基づく使用貸借契約の終了〜親族間の不動産の使用貸借契約を念頭に〜(判タ1499号49頁)

1 別紙最高裁の判決一覧 A 597条1項により解決を図ることができる類型 B 597条2項により解決を図ることができる類型 C 597条3項により解決を図ることができる類型 2 (B類型)明確な使用目的の定めがなく、個別的具体的な使用目的も認定できない場合に…

滞納処分による差押え後に設定された賃借権により競売開始前から使用又は収益する者の民法395条1項1号該当性(最三小決平成30年4月17日判タ1449号91頁)

1 抵当権者に対抗することができない賃借権が設定された建物が担保不動産競売により売却された場合において、その競売手続の開始前から当該賃借権により建物の使用又は収益をする者は、当該賃借権が滞納処分による差押えがされた後に設定されたときであって…

ノンコミットメントルール(判タ1447号5頁)

1(1)ノンコミットメントルールとは、a弁護士が、争点整理において、後日撤回する可能性を留保した暫定的発言をすることを認めること、b裁判所は、暫定的発言を主張として扱わないこと、c相手方代理人は、暫定的発言を次回の準備書面で引用したり、そ…

民訴法17条に基づく移送−要件・考慮要素の検討を中心に−(判タ1446号5頁)

1 民訴法17条の類推適用による自庁処理 民訴法は、特定の地方裁判所又は簡易裁判所を専属的管轄裁判所とする旨の管轄の合意に反し、法定の管轄裁判所に当たる他の地方裁判所又は簡易裁判所に訴えが提起された場面において、当該裁判所が管轄違いを理由とす…

認知症対応型共同生活介護サービスを提供するグル―プホームの2階の居室の窓から認知症高齢者である入居者が自ら転落して受傷した事故について、当該施設は通常有すべき安全性を欠いており、設置又は保存の瑕疵があったとして、工作物責任を肯定した事例(東京地判平成29年2月15日判タ№1445号219頁)

1 本件は、Yが認知症対応型共同生活介護サービスを提供するグループホーム(本件施設)の2階の居室(本件居室)の窓(本件窓)から地上に転落して受傷したA(当時93歳)及びその長女であるXが、本件施設には居室の窓からの転落を防止するための措置が講…