*複数の包括遺贈のうちの一つがその効力を生ぜず、または放棄によってその効力を失った場合における、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきものであったものの帰趨(判タ1511号107頁)

1(判決要旨)複数の包括遺贈のうちの一つがその効力生ぜず、又は放棄によってその効力を失った場合、遺言者がその遺言に別段の意思を表示した時を除き、その効力を有しない包括遺贈につき包括受遺者が受けるべきであったものは、他の包括受遺者には帰属せず、相続人に帰属する。

2 本件遺言のうち、Eへの包括遺贈は、Eの放棄によりその効力を失った。

   民法995条本文は、遺贈がその効力を生じないとき、又は放棄によってその効力を失ったときは、受遺者が受けるべきであったもの(以下「失効受遺分」という。)は相続人に帰属する旨を定めているところ、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされる(民法990条)ことから、学説上、民法995条の「相続人」に包括受遺者が含まれるか否かに争いがある。

    従来の通説は、失効受遺分は(相続人に加えて)他の包括受遺者にも帰属すると解していたが、現在では、同乗の「相続人」に包括受遺者は含まれず、失効受遺分は専ら相続人に帰属すると解するのが多数説である。

   なお、失効受遺分が各相続人にいかなる割合で帰属するか(法定相続分の割合か、指定相続分の割合か、それ以外か)という点は残された問題である。