2010-01-01から1年間の記事一覧

「限定承認」と「みなし譲渡」

1 相続税以外に、地方税法第73条の7により、不動産取得税は課税されない。 2 先買権行使により完全な不動産所有権を取得した場合、民法932条但書により 「不動産の持分を移転した分」についてのみ不動産取得税が課税され、 持分移転登記伴わない法定相続持…

限定承認と先買権行使・民法932条但書

1 裁判所の選任した鑑定人の時価鑑定の鑑定価格を採用することにより、 相続人の恣意性を排除し、債権者の利益を守るとともに、相続人の遺産への 愛着心等に一定の配慮をしたものである。 2 先買権制度の趣旨 裁判所の選任した鑑定人の時価鑑定の鑑定価格…

財団債権相互の順位

1 ① 破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(148①(1)) ② 破産財団の管理、換価および配当に関する費用の請求権(148①(2)) ③ 保全管理人が債務者の財産に関して行った管理および換価に関する費用 の請求権 は、他の財団債権に先立って弁…

立替払と所有権留保と民事再生

1 購入者に係る再生手続が開始した時点で上記自動車につき上記立替払を した者を所有者とする登録がされていない限り、販売会社を所有者とする 登録がされていても、上記立替払いをした者が上記の合意に基づき留保した 所有権を別除権として行使することは…

特別受益の評価の基準時

1 リーガル 遺産分割(205頁) ① 遺留分 ・・ 相続開始時説(最判51.3.18) ② 現在の実務 ・・ 相続開始時の基準時 ③ 不動産 ・・ 開始以前に売却したときも、その土地を現在 所有しているものと仮定して算定 〔問題点〕 a.バブル時に売却 → 低すぎる b.…

成年後見人の口座の出金

◇ A銀行B支店の預金を「C支店」で出金出来るか? 甲銀行 ・・・ 可 乙銀行 ・・・ 指定する1ヶ所のみ

公共工事の前払金保証制度

◇ 金法1627号42頁 「公共工事の前払金保証制度における前払金専用口座の法的性格」 1 公共工事の前払金保証事業に関する法律に基づき発足したものである。 「前払金の保証」とは、公共工事に関してその発注者が前金払いをする場合 において、請負者から保証…

前払保証金(金法1906)

1 前払金の支払の制度は、請負者の資金調達を確保するとともに、請負契約 解除の場合に地方公共団体が確実に前払金の返還を受けられるようにする ことが目的である。 2 出来確認が行われた時点で、公共団体に返還されるべき前払金が存在しな いことが確認…

限定承認における相続財産の破産後の任意売却手続

1 目的 番所有権登記名義人表示変更 原因 平成 年 月 日亡A相続財産破産 変更後の事項 所有者 亡A相続財産 添付書類 相続関係戸籍(相続放棄、限定承認受理証明書含む) 破産管財人の選任審判書 破産管財人の委任状 2 目的 所有権移転登記 原因 平成 年 …

破産と時効

1 破産終結決定がされて法人格が消滅した会社を主債務者とする保証人は、 主債務についての消滅時効が会社の法人格の消滅後に完成したことを主張 してこれを援用することはできない(最判15年3月14日第二小法廷判決)。 2 会社が破産宣告を受けた後破産終…

異議等のある破産債権に関する訴訟の受継

1 訴訟が既に係属している場合には、引き続き当該訴訟において債権の存否 を確定させることが訴訟経済に合致し、当事者間で形成されてきた訴訟状態 を尊重することにもなるため、破産債権査定申立てではなく、既に係属して いる訴訟を受継させることとした…

前払保証金の信託終了による破産財団への復帰と相殺禁止

1 名古屋高裁金沢支部、平21.7.22判決(金法1892号45頁) 2 上記の出来高確認よりも前の時点では、本件信託契約の目的を達成し又は 目的を達成することができなくなったとして信託が終了した上、Yに帰属す べき残余財産が特定したものと解することはでき…

限定承認と登記(登記研究591)〔5189〕

1 本件照会は、相続開始以後の売買が相続財産の任意売却に当たることから 相続財産管理人が当該売買を原因とする所有権移転登記を申請することは、 相続財産の換価方法を競売に限定した民法第932条の趣旨に照らして受理 すべきでないのではないというもので…

限定承認における相続財産の換価

1 競売 2 限定承認者が相続財産を買い受ける場合 ① 限定承認者が自己の固有の資金で相続財産を買い受ける場合には、 後記の手続で家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って売買すること になる。 ② 相続人(限定承認者)が鑑定人の評価した価額を弁済すれ…

給料等の先取特権に基づく債権差押命令

1 申立て却下(判タ1330-272) 2 民法306条2号の雇用関係によって生じた債権についての先取特権に基づき 債務者の有する債権の差押えを求めるには、民事執行法193条1項により、 「担保権の存在を証する文書」の提出が求められているが、その文書は、 この…

国有地の時効取得と背信的悪意者

1 ① 国有地について、黙示の公用廃止があったとして時効取得の対象と なる事例。 ② 国有地の譲与を受けた地方公共団体(世田谷区)が時効完成後の第三者 として登記欠缺の抗弁を主張することが信義則に反する (東地判21.9.15)(判タ1329-146) 2 公共用…

届出期間後の代位弁済

一 再生債務者が知りながら自認債権として認否表に記載しなかった債権 (民再181①三) 二 第96条 新再生債権者の単独による届出名義の変更も可能ではあるが、実務的には、 新旧債権者の連名による届出が通常であり、この場合には、証拠書類の写し の添付は…

貸金等根保証契約

1 「貸金等根保証契約」に該当しない根保証としては、主たる債務が、 ① 継続的な商品売買に係る買主の代金債務のみであるものや、 ② 不動産賃貸借に係る賃借人の賃料債務のみであるものなど 2 これらは、「貸金等根保証契約」に該当せず、改正後民法におけ…

留置権による競売

留置権の存在を証する文書は、以下の理由から、公文書に限定すべきである との考え方がある。 1 競売手続は定型的かつ迅速に処理をすることを旨とし、執行裁判所が 実体的な内容にまで立ち入って審査・判断するのは相当でない。 2 民事執行法181条1項4号で…

社外労働者と労働契約の成否(判タ1328-53)

1 労働者供給事業は、労働の強制、中間搾取や使用者責任が不明確であること など、弊害を伴いがちであることから、職業安定法44条で禁じられている。 昭和60年、労働者派遣法が制定され、一定の範囲で企業が労働者派遣業者 から労働者の派遣を受けることが…

建物建築請負人の請負代金債権と敷地の商事留置権(金法1906-75)

◇ 東京高裁 平22.7.26決定1 理由の第1は、商法521条の「物」には不動産が含まれないという解釈で ある。 2 理由の第2は、「商行為によって自己の占有に属した」の解釈である。 本決定は、建物建築請負人が建物建築のために敷地を占有する場合、その所有 …

外国通貨金銭債権(§103-2(2) 2項1号ロ

1 外国通貨金銭債権については、破産手続開始時の為替相場に従ってその破産 債権額を国内通貨で評価する。 2 我が国の相場を基準とすることが妥当である。 破産債権者が邦貨による評価を行わず、外国通貨によって破産債権の届出を した場合の取扱いについ…

否認の登記

1 否認の登記がされるのは、「登記の原因である行為が否認されたとき」また は「登記が否認されたとき」である。160条から162条までを理由として登記の 原因である行為が否認された場合が前者の例であり、164条を理由として物権 変動の対抗要件である登記が…

明渡猶予と引渡命令

1 代金納付から6ヶ月の明渡猶予を受けられる典型例としては、抵当権に後れ る賃貸借に基づき建物を占有する者、抵当権に後れる賃貸借がその後期間満了 し更新された賃借権に基づき占有する場合の占有者、担保不動産収益執行の手 続や、強制管理の手続におい…

素因減額(判タ1326-38)

1 最三小法平8.10.29(首長判決) 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたと しても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害 者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり勘酌することはできな…

医療法人と退社社員の払戻し(判タ1327-75)

◇医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて 分配する旨の規定がある場合において、同定款中の退社した社員はその出資額 に応じて返還を請求することができる旨の規定は、出資した社員は、退社時に 当該法人に対し、同時点にお…

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託と遺留分減殺(判タ1327-18)

1 後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、「受益者の死亡により、当該受益者の 有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者 の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む)のある信託」 (信託法91条) 2 例えば、委託…

支払の停止を要件とする否認の制限(法166)

1 支払不能と異なって支払停止は、破産者の継続的経済状態ではなく、一回的 行為であり、破産手続開始からみて合理的範囲を超えて否認の可能性をさかの ぼらせることを認めるのは、取引の安全を害する結果となる。 2 有害性が強い無償行為否認(160③)〔§1…

交通事故と破産(判タ1326-54)

1 目次 被害者の破産と損害賠償請求権の帰属 破産といわゆる被害者請求権の帰すう 既払金の処理 加害者が破産 2 慰謝料 ① 差押禁止財産か ② 最大判昭42.11.1、判タ211-224 帰属上の一身専属性を否定した。 最一小判昭58.10.6、判タ513-148 名誉侵害を理由…

◇ 重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合に、当該建物に居住して いたという利益を損益相殺等の対象として損害額から控除することの可否 −平22.6.17第一小法廷判決(判タ1326-111)− 〔Xらは、Y1から鉄骨スレート葺3階建ての居宅(本件建物)…