1 代金納付から6ヶ月の明渡猶予を受けられる典型例としては、抵当権に後れ
る賃貸借に基づき建物を占有する者、抵当権に後れる賃貸借がその後期間満了
し更新された賃借権に基づき占有する場合の占有者、担保不動産収益執行の手
続や、強制管理の手続において裁判所が選任した管理人から賃借した占有者。
2 明渡猶予期間を6ヶ月としたことから、明渡猶予を受ける建物使用者に対し
ては引渡命令申立てについての調整が必要。
9ヶ月を経過したときは、引渡命令の申立てをすることができない。
3 明渡猶予期間だけを6ヶ月のままにしておくと、買受人は、明渡猶予を受け
た占有者が猶予期間の経過後も建物の明渡しをしない場合、引渡命令の手続
により簡易に明渡しの実現を求めることができず、買受人に対し著しい不利益
を与えることになるからである。
4 平成8年に民事執行法が改正され、結果、引渡命令の相手方となりうる者は、
① 債務者等およびその一般承継人
② 不動産の占有者で、買受人に抵抗することができる占有権原を有して
いる者を除く者
である。使用借権者、対抗要件を欠く賃借権者は、改正前の多数説であった
対債務者権原説によれば引渡命令の相手方にならなかったが、改正後にはこれ
になりうる。