2014-01-01から1年間の記事一覧

限定承認における相続財産の管理者の競合

1.限定承認における相続財産の管理者(民法936条1項)と相続財産保存のための相続財産の管理者(民法926条2項、民法908条2項)の競合 2.家庭裁判所は、共同相続人の中から選ばれた管理者の管理が不十分な場合、利害関係人の請求により、相続人以外の第三…

土壌中に有害物質を含む土地売買契約

1 工場跡地をガソリンスタンド用地として購入した売買契約において、土壌中に有害物質が含まれていたことが判明した場合について、買主の錯誤による無効が否定され、また、売主の瑕疵担保責任、売主の説明義務違反による債務不履行責任が否定された事例(判…

成年後見人等の財産に関する権限と限界(小西洋 東京家庭裁判所判事)(判タ1406号16頁)

1 成年後見人等の財産に関する権限と限界について家庭裁判所の立場から説明する。 説明にあたっては、筆者が日頃、成年後見人等からの問合わせに対して回答する際の思考の順序を意識した。 2 後見開始の審判前の保全処分として選任される財産の管理者(家…

企業間における継続的契約の解消

1 企業間における継続的契約の解消に関する裁判例と判断枠組み(判タ1406号29頁) 2 継続的解消の要件としてのやむを得ない事由 継続的契約の一方当事者が契約関係を解消しようとする場合、法律上又は契約上、形式的に解消の要件を満たすとしても、それだ…

再生債権として届出された共益債権

1.民事再生法上の共益債権に当たる債権を有する者は、当該債権につき再生債権として届出がされただけで、本来共益債権であるものを予備的に再生債権であるとして届出をする旨の付記もされず、この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の…

別除権協定(民事再生)と破産(最第一小判平成26年6月5日判タ1414号88頁)

1.別除権の行使等に関する協定(別除権の目的である不動産につきその被担保債権の額よりも減額された受戻しの価格を定めて再生債務者が別除権者に対しこれを分割弁済することとし、再生債務者がその分割弁済を完了したときは別除権者の担保権が消滅する旨…

免責と執行文の付与

1.免責許可の決定が確定した債務者に対し、確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されな…

加重障害と損害額の算定

1.赤本 H18年・下巻 129頁以下。2.逸失利益 (1)逸失利益の算定で着目されるのは以下3点 A 基礎収入の捉え方 B 労働能力喪失率の捉え方 C 素因減額と同様の考え方により、減額をする場合があるか ※裁判例は必ずしも、一定の考え方によっていない…

相続財産管理人事件の移送

1.移送の上申 家事審判法の下では、相続財産管理人選任後の監督、その後の裁判手続等を考慮して、事件を他の家庭裁判所に移送を求める上申がされた2.移送を求める事由 ア 相続財産(特に不動産)が移送先の家庭裁判所の管轄地に所在する場合 イ 申立人の…

建築紛争における専門家調停の活用(判タ1381号57頁)

1.大阪地裁建築・調停部では、a 建築関係事件の専門部として、付調停や専門委員制度を活用して、充実した審理のもとで迅速な紛争解決にあたっていくこと、b 調停部として、複雑困難化する専門的知見を要する付調停事件について、専門的知見や法的観点に裏…

投資信託受益権(MRF等)と個人向け国債の相続

H26・2・25第三小法廷判決 判タ1401号153頁1(判旨) (1)共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。 (2)共同相続された個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分…

吐物の誤嚥と外来の事故

1.(判旨)吐物の誤嚥は、傷害保険普通保険約款において保険金の支払い事由として定められた「外来の事故」に該当する(平成25.4.16第三小法廷判決 判タ1400-106)。2.本件は、Aが吐物を誤嚥して窒息し、死亡したことについて、死亡保険金の支払いを求…

権能なき社団の代表者個人名義への所有権移転登記手続請求事件の原告適格

1.権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する(最一小判平成22年2月27日判タ1399-84)2.本件は、権…

所有権の更正の登記

1.権利の更正の登記は、既にされた権利に関する登記について、 ア「当初」の登記手続に錯誤又は遺漏があるため、 イ その一部に登記と実体関係との間に「原始的」な不一致がある場合において、これを訂正補充する目的でされる登記であり、 ウ この更正の登…

遺産共有持分と他の共有持分との解消方法(最二小判平成25年11月29日判タ1396号150頁)

1.共有物について、遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合、共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は、民法258条に基づく共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって遺産共有持分…

担保の取戻(民事保全規則17条)

1.民事保全規則17条4項5項 (1)保全命令発令後に、債務者が債権者に対して債務名義を得た場合(反訴の勝訴)等には、債務者が債権者(担保提供者)の担保取戻請求権を承継して、保全命令を発令した裁判所に対し担保取戻の許可を申立てることができる…

共有者への相続財産持分全部移転(民法255条と民法958条の3)

1.相続人不存在かつ特別縁故者不存在の場合になされる、共有者への相続財産持分全部移転登記手続は、相続財産法人を登記義務者、共有者を登記権利者とする共同申請による。2.登記義務者の同一性を示すものとして、被相続人の共有持分取得の登記に関する…

相続登記と戸籍と判決

1.登記義務者の相続人が、登記申請人となる場合、相続証明情報の添付が必要である(不動産登記法62 条、不動産登記令7条1項5号イ)。 この相続証明情報は、申請人が登記事務者の相続人であって、かつ動産登記法62条、不動産登記令7条1 項5号イ)。申請人以…

「まかせる」遺言の効力

1.「相続を全てまかせる」旨の遺言について、包括遺贈する趣旨のものであると解された事例(大阪高裁平成25年9月5日判決・判時2204号34頁)2.訴外Aは、「私が亡くなったら財産については、私の世話をしてくれたXに全てまかせますよろしくお願…

転付命令が発せられた場合の供託

1.民事執行法は、転付命令に対して執行抗告を認め(民執159条4項)、転付命令は確定しなければ、効力を生じないこととしている(民執159条5項)。2.転付命令の確定前に、第三債務者は民執法156条1項によって、差押えの対象となった金銭債権の全額又は差…

別除権付債権

1.担保権があっても被担保債権の債務者が破産者でなければ、当該債権は別除権付債権にならない。2.Bが貸金債務を負い、破産者AがBの債務について保証し、自分の保証債務を被担保債務として自己所有不動産に抵当権を設定している場合、Aに対する保証…

成年後見人の調査人

1.家事事件手続法124条 (1)家庭裁判所は、適当な者に、成年後見の事務若しくは成年被後見人の財産の状況を調査させ、又は臨時に財産の管理をさせることができる。 (2)家庭裁判所は、前項の規定により調査又は管理をした者に対し、成年後見人の財…

賃借人への目的物への譲渡と賃料差押(判タ1384‐122)(最判H24.9.4)

1 本件は、賃料債権の差押え後に、差押債務者(賃貸人)が賃貸目的物を第三債務者(賃借人)に譲渡したため、譲渡後も賃料債権が発生し、取立が可能かが問題となった事案。2 原審は、賃料債権は第三者の権利の目的となっているから、民法520条ただし書によ…