成年後見人の調査人

1.家事事件手続法124条
(1)家庭裁判所は、適当な者に、成年後見の事務若しくは成年被後見人の財産の状況を調査させ、又は臨時に財産の管理をさせることができる。
(2)家庭裁判所は、前項の規定により調査又は管理をした者に対し、成年後見人の財産の中から、相当な報酬を与えることができる。
(3)家庭裁判所は、家庭裁判所調査官に第1項の規定による調査をさせることができる。
(4)民法第644条、第646条、第647条及び第650条の規定は、第1項の規定により財産を管 理する者について準用する。
2(1)東京家庭裁判所後見センターは、同124条1項「適当な者」を「調査人」と呼んで、調査を命じる運用をしている。
 (2)東京弁護士会の調査人選任件数
    2012年度・・3件
    2013年度・・5件
 (3)東京家庭裁判所判事による後見センターの運用状況(民事法研究会発行 実践成年後見11月号NO.47)
   (ア)平成24年10月から平成25年7月までの調査・・59件
   (イ)調査人の報酬額・・3万円〜5万円(謄写費用・調査費用は原則調査人負担、但し報酬で考慮されることもある)
3(1)一般予防
    流動資産1000万円以上を保有する被後見人の親族後見人に対して、
  (ア)後見制度支援信託の利用
  (イ)後見監督人選任の請求(民法849条)
  のいずれかを選択させる運用(平成25年6月から)
(2)個別対応
ア 後見事務報告の内容に問題がある場合
  (ア) 調査人の選任(民法863条1項・家事事件手続法124条)
  (イ)(ア)の結果により、不当利得返還請求、後見監督人の選任、後見人の解任(民法846条)等。(民法863条2項)
 イ 後見事務報告の遅滞があり、督促に応じない場合
  (ア)後見監督人の選任
  (イ)後見人の追加選任(民法843条3項)及び職務執行停止又は権限分掌(民法863条2項)
5.調査人の業務の流れ
  記録閲覧→担当裁判官・書記官と打合せ→裁判官作成の調査事項に調査事項を追加→調査日程調整→照会書送付(親族後見人呼出期日)→親族後見人との面会(裁判所)→追加面会・追加資料の提出を求める等→裁判所へ調査結果報告
6.調査人による不当利得返還
  4の調査により、後見人の不適切な金銭管理が判明した場合、調査人が後見人に対し、不当利得返還請求をすることもある。
  不当利得返還請求が、「調査」(家事事件手続法124条3項)の範囲を超えているのではないかという問題はあるが、事実上実施され、調査報酬(家事事件手続法124条2項)も与えられている。
7(1)調査人による調査→親族後見人から専門職後見人への改任
 (2)家裁調査官による調査→親族後見人から専門職後見人への改任
 (1)、(2)の振り分け基準はよくわからない。