2012-01-01から1年間の記事一覧

大阪地裁の担保収益執行(判タ1381−68)

1 担保不動産収益執行事件には,競売申立てと併用してほぼ同時に申し立てられる場合(競売併用型)と収益執行だけを申し立て,競売申立てをしない場合(競売非併用型)があるが,平成22年は,競売併用型が17件,競売非併用型が13件,平成23年は,競…

執行行為の否認

1 否認しようとする行為が執行行為にもとづくとき(165後段) 2 転付命令にもとづいて,差押債権者が第三債務者からすでに弁済を受けていれば, 破産管財人としては,債権者の満足を否認して遅延利息を加えた弁済金の返還を 受ける。 3 第三債務者の弁済…

清算型遺言の執行 判タ(1380-48)

1 遺産を換価処分して債務等を支払った後の残余を取得させる旨の清算型の遺言は,相続分の指定及び分割方法の指定の意味を持った包括遺贈と解されている。 2 占有者の排除 占有者が使用貸借の場合明渡を求めたうえで売却するか問題のあるところであるが,…

葬儀を依頼する遺言 (判タ1380-53)

1 受遺者に葬儀を行わせる趣旨の遺言は,負担付遺贈と解され,葬儀の履行は受遺者が行うべきことであり,当該受遺者が遺言執行者に指定されているとしても,遺言の執行ではない。 2 受遺者ではない遺言執行者に委託するものであるときは,この委託に遺言の…

供託金の取戻(担保)(転付命令)

1 【取戻請求権者の範囲】 取戻請求権者は,原則として供託者ですが,その承継人又は取戻請求権の 差押債権者・転付債権者も取戻請求ができます。 取戻請求をするには,供託後に供託原因が消滅したこと(供託原因の消滅) が必要です。 2 【添付又は提示書…

敷金及び保証金(収益執行)

1 収益執行期間中に新規賃貸借契約が終了した場合には,管理人は,未払賃料等を 控除した上で,その残額を賃借人に返還するべきである。 2 新規賃貸借契約の終了前に収益執行が終了した場合には,所有者や賃借人にこれ を返還すべきである。 3 敷金等は賃…

清算人に売却費用の例

1 【選任申立】 収入印紙 1000円 郵券 2100円2 【選任取消】 登録免許税 6000円 郵券 1020円3 【清算人登記】 33200円 4 【本人確認情報】10500円 5 【 計 】53820円

遺言無効確認請求事件を巡る諸問題 (判タ 1380-4)

【1】 この種事件の実体法及び手続法の理論上,実践上の諸問題を簡潔に整理し,訴状等の書式や訴状チェックリスト等を添付。(東京地裁判事 プラクティス委員会) 【2】 訴え提起に際して検討すべき事項 1 手続法関連事項 (1)訴えの利益 (2)当事者適格 (3…

遺言の執行実務に関する諸問題 (判タ 1380-41)

第1 はじめに 第2 遺言執行者による遺産の管理処分権 第3 不動産の登記と遺言の執行 第4 預貯金に関する遺言執行 第5 清算型遺言の執行 第6 遺留分権利者との関係 第7 相続人の処分行為等の制限 第8 遺言執行者に対する葬儀の依頼について

遺言執行者の職務権限 (判タ 1380-29)

第1 遺言公正証書の作成状況 第2 公正証書での記載例 第3 遺言執行行為 第4 遺言執行者の法的性格 第5 相続させる遺言と遺言執行者の登記権限 第6 預金払戻しに関する遺言執行者の権限

形式的競売と無剰余取消 (判タ 1379-104)

1 民法258条2項所定の競売を命ずる判決に基づく不動産競売については,民事執行法59条及び63条が準用される。(平24.2.7第三小法廷決定) 2 執行裁判所は,買受可能価額が,手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権の見込額の合計に満たない旨の民事執…

上下水道・電気・ガス・電話・プロバイダ料金(公共料金)

1 破産者が個人の場合 (1) 下水道の使用料債権は,租税等の請求権 (2) 個人の場合,上水道・電気・ガスの使用料債権のうち,申立日の属する月以降の供給にかかる使用料は財団債権となり,これを除く開始決定前6ヵ月間の供給部分にかかる使用料債権は優先的破…

貸室事務所内の動産

1 未払賃料があると賃貸人は,民法312条で先取特権を有する。2 そこで賃借物件内の破産者所有動産については,未払賃料について賃貸人の先取特権があるので,それを貸主主張してもらえれば,破産管財人は他の債権者に対しても説明が付く。

非器質性精神障害における割合的解決の法律構成と考慮要素 (判タ1379-11)

1 本稿(3)は,本稿(2)の裁判例分析を踏まえ,素因減額以外の割合的解決手法を用いる場合について若干の分析を行った後,素因減額を含む割合的解決についての思考の順序,考慮要素とその軽重について類型化を試み,さらに同種事案における審理・判決上の…

工場抵当法三条の抵当物件目録の記載と対抗要件 (判時1510-90)(配当異議事件 最高裁 平6.7.14. 小法廷判決)

1 原告は工場抵当法(以下「法」という。)一条にいう工場に属する建物(本件建物)につき順位一番の根抵当権を設定していたが,右設定登記について法三条に規定する目録(以下「三条目録」という。)は提出されていなかった。 被告は後順位の抵当権者である…

【工場抵当法3条目録に記載のない供用物件の売却代金】

1 抵当権者A及びBはいずれも優先権を主張できず,交付要求庁Dのみが優先配当受領資格を有する。 2 その上で残額が生じた場合には,A〜C(配当要求)の各債権額(抵当権者A,Bについては,工場不動産の売却代金から配当を受けた残債権額)に応じて案分…

収益執行の留意点 (その4)

1 任意売却か競売かについての視点(1) 競売の場合,土地・建物の使用,所有権に制約はないか(進入路の共有等,任意売却 でないと調整できないことがあるか)(2) 現在の入居率(競売により悪化していく一方)を築年数等からして回復させることが可能か。 (…

生命保険の特別受益持戻の金額

1 特段の事情は,保険金の額のみによって判断されるものではないが,保険金額が遺産総額の6割を超えるような場合は,持戻しの対象となると判断される可能性が高くなる。 (判タ 1376-57,東京家裁) 2 【持戻しの対象となる金額】 保険金額の修正説(通説)は…

非器質性精神障害における割合的解決とその方法 (判タ1378-14)

1 割合的解決についての法律構成 2 割合的解決及び考慮要素に関する最高裁の判断 3 非器質性精神障害における割合的解決を考える上での視点 4 裁判例の紹介 5 裁判例の分析

収益執行事件申立の留意点 (その3)

【滞納処分との競合】 1 給付義務者への賃料債権が滞納処分による差押えを受けている場合の手続進行については,滞調法に調整規定がない(法93条の4は裁判所による債権差押え等がされている場合についての規定であると解される。)以上,先着手主義によると解…

滞納処分の差押(債権)との競合

1 第三債務者の陳述等により,執行裁判所がその滞納処分の存在を知ったときは,裁判所書記官は,差押命令が発せられた旨を当該滞納処分による差押えをした徴収職員等に対して通知しなければならない(滞調20条の3第2項,20条の10) 2 【徴収職員等の取立て…

収益執行 文献

1 判タ1319(2010.5.15)(京都地裁) 2 判タ1205(2006.5.15)(大阪地裁) 3 処理要領 (H16年1月) ( 〃 ) 4 〃 (案) (H16年3月)(執行官) 5 運用実情(金法1803)(2007年)(大阪地裁) 6 処理要領(H17年7月)(福岡地裁) 7 大阪地裁マニュアル(H1…

収益執行の申立の留意点 その2(管理人)

1 管理業者の有無(自己管理か否か?)2 指定の管理業者の有無3 物件は任意売却か競売か (1)居住者の不安・・・退室を少しでも減少するため, (2)新規募集の時の重説の関係

収益執行の申立の留意点 その1(裁判所)

1 給付義務者の数や債権者による把握の程度,管理状況,競売事件申立ての有無あるいは予定,執行妨害等の法律上の問題が生じるおそれの検討 2 【給付義務者の記載】 申立債権者にも可能な範囲での調査が義務づけられているが(規173条2項,63条2項),必ず…

交通損害賠償案件(被害者側)処理のための基礎知識 【自由と正義 2012年10月号】

【2】 受任時の確認事項[弁護士費用特約の存否] 1 補償内容 2 利用の現状 3 利用の注意点 【3】 複数の保険会社等との交渉・手続 1 基本的な手続の流れ 2 加害者の対人賠償保険 3 加害者の自賠責保険 4 政府保障事業 5 被害者の傷害保険 6 自転…

「終結後履行完了前破産事件」

1 再生計画の履行完了前の再生債務者につき破産手続開始の決定があった場合には,再生計画によって変更された再生債権は原状に復し(法190条1項),破産手続における破産債権の額,配当に関して調整規定が設けられている(同条3項,4項)。 2 これらの規定は…

交通損害賠償事件における非器質性精神障害をめぐる問題 (判タ1377-10)

1 (1)必須の争点となる因果関係論について,その判断手法及びその認定要素を 分析した上(2)素因減額等の割合的解決の法律構成及び斟酌の要素 (3)論文の末尾に,分析裁判例65例を整理した一覧表を添付 2 事故の外力により脳組織に器質的損傷が生じ,情動・認…

「労働者性」をめぐる裁判例と実務 (判タ1377-4)

第1 「労働者性」を判断する基準 (1)個別労働関係における「労働者」 (2)労働組合法上の「労働者」 第2 職種別の「労働者性」

東京家庭裁判所家事第5部 (遺産分割専門部) における遺産分割事件の運用 (判タ1374−54)(1276-56)

一、 1 特別受益としてしばしば問題とされる点 2 「生計の資本」としての贈与か否かが問題となるもの 3 「不動産の無償利用」 (1) 通常,使用借権の設定が,特別受益にあたる。(2) 当該土地が収益物件に当たり,これを第三者に賃貸し,賃料を得ていたはずで…

不法原因給付と破産

1 破産者から得た不当利得に当たる場合に,当該利得を受けた者が破産管財人に対し,その利得が不法原因給付に基づくものであるとして返還請求を拒むことができるか。消極(判タ1372-149) 2 これを否定して破産管財人の返還請求を認める複数の地裁裁判例が…