「終結後履行完了前破産事件」

1 再生計画の履行完了前の再生債務者につき破産手続開始の決定があった場合には,再生計画によって変更された再生債権は原状に復し(法190条1項),破産手続における破産債権の額,配当に関して調整規定が設けられている(同条3項,4項)。


2 これらの規定は,再生計画認可後の再生手続の廃止(法194条)による牽連破産の場合のみならず、終結後履行完了前破産事件につき破産手続が開始された場合にも妥当する。


3 終結後履行完了前破産事件では,通常再生事件で監督委員が選任されていることから,原則として,監督委員であった弁護士を破産管財人に選任する運用である。


4 債権者が,再生手続開始の日から破産手続開始の日の前日までの約定利率に基づく遅延損害金債権につき一般破産債権の届出をしたところ,


5 破産管財人が,法190条1項の「原状に復する」とは破産手続開始決定により将来に向かって再生計画の効力が失われるものであり,再生手続開始の日から破産手続開始の日の前日までの遅延損害金については再生計画によって全額免除されているなどと主張して異議を述べたことがあった。


6 本件条項は,「再生計画の履行完了前に,再生債務者について破産手続開始の決定がされた場合には,再生計画の効力を遡及的に消滅させる趣旨の規定であると解するのが相当である。」として破産管財人の主張は認められなかった。


7 配当の具体的な計算方法については,『破産・民事再生の実務(下)』333頁