2013-01-01から1年間の記事一覧

民法642条と破産法53条の関係(判タ1394-366)(東京地裁24.3.1)

1 本件は、請負契約における注文者の破産において、請負人が、瑕疵担保義務 もしくはその前提となる検査受検義務等が未履行であるとして、請負代金請求 権が財団債権になる(破53Ⅰ、148Ⅰ⑦)と主張した事例。2 民法642条の趣旨は、請負人は仕事が完成して初…

供託金の支払(取戻・還付)

1.賃料の増減額の事件の和解で、供託金の還付がされていない場合において、 一方当事者が供託金の払渡しを受ける合意がされる場合がある。2.供託は、被供託者が受諾の意思表示をするまでは、実体法上供託者・被供託者双方に、 供託金の払渡請求権(取戻…

取得税再更正処分等取消請求事件(価額弁償と遺贈の時期)

1 本件土地の遺贈に対する遺留分減殺請求について、受遺者が価額による 弁償を行ったことにより、結局、本件土地が遺贈により、相続人から受遺者 に譲渡されたという事実には何ら変動がないこととなる。 (最判平4.11.16 判タ803号61頁)2 裁判官大堀誠一…

使用借権の時効取得(判タ1393-170)(東京高判25.9.27)

1 親族間においては、土地の使用貸借をめぐる紛争が多く、その中には、 土地の使用借権の時効取得が争点をなった事件も相当数ある。 2 最二小判昭48.4.13は、土地についても使用借権の時効取得が成立し 得ること自体は、認めている。 3 上記最高裁判決に…

果実収取権(遺贈)

1 特定遺贈の受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を 取得する(民992条本文)。2 「遺贈の履行を請求することができる時」とは、通常の遺贈においては 遺言者死亡の時、停止条件付遺贈においては条件成就の時、始期付遺贈 においては期…

相続開始後の相続財産(不動産)の管理・使用に関する相続人間の訴訟 (判タ1390、1392、1393)

【1390】 第2 相続開始後の相続財産(不動産)の使用(占有)に関する相続人間の訴訟をめぐる問題2 訴訟物と問題の所在について 3 明渡請求[論点1]に関する検討 4 不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求[論点2] に関する検討 (1)裁判例…

民事調停(参加)

1 利害関係人参加申立書 頭書事件について、利害関係人は、相手方の債権者として、 この調停の結果について重大な影響を受けるので、利害関係人 として本調停に参加したく申立てをします。 2 参加を申し出ることができるのは、調停の結果について 法律上の…

第三債務者の供託費用

1 第三債務者が供託金から支払いを受けることができる供託費用(義務 供託のために要した費用)の種目と金額の例としては、 1.供託書の書記料150円 2.事情届の書記料150円 3.供託金の提出費用500円 4.供託書正本の交付を受けるために要する費用500円 5.事情…

遺産分割管理費用の清算の問題

1 遺産管理費用 固定資産税などの公租公課、遺産が賃借権であるときの賃料(地代)、 家屋の修理費・改築費、土地改良費、火災保険料の支払、遺産の賃借 人に対する立退料。 2 見解 ア 積極説 イ 消極説 共同相続人が相続分に応じて負担すべきであり、管理…

車両損害 (判タ 1392-20)

第2 車両損害についての概観 1 人的損害と物的損害の区別について 2 訴訟における位置付け (1)訴訟物 (2)自動車損害賠償保障法の適用の有無 3 車両損害の算定についての考え方 (1)物理的全損と経済的全損 (2)事故当時の価格と売却代金の差額を請求し得る…

調停に代わる審判

1 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、 当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、 事件の解決のため必要な審判をすることができる。 これを「調停に代わる審判」という(家事法284条1項)。 2 家事事…

自庁調停(自庁処理)

1 家事審判事件が係属している家庭裁判所が、当該事件を 家事調停に付する場合には、当該裁判所が当該家事調停 事件の管轄権を有するかどうかを問わず、みずから 処理することができる(家事法274条3項)。

否認権の実務(403)

1 総論 否認の類型現行法を中心に〜 1 債権者全体を害する…詐害行為 2 債権者平等に反する…偏頗行為 2 詐害行為否認 (1) 支配不能後の在庫等の処分 1 集合物譲渡担保…特定性の要件 2 倉庫の賃料との兼ねあい 3 動産先取特権 (2) 財産分与 1 詐害行為の最判…

赤本 2009年 下 41頁

1 死亡逸失利益から生活控除を行うことは、男女間の収入格差、損害賠償額 の高額化等の解決、あるいは個別事案における遺族の生活保障の観点など から求められる損害賠償額算定における調整機能を果たしている。2 家族である被扶養者の存在は、男性にとっ…

新規債務についての担保供与または債務消滅行為(いわゆる同時交換的取引)の除外(法162)

1 偏頗行為否認の対象とならないのは、新規債務についての担保供与や 債務消滅行為である(本条(1)柱書かっこ書参照)。2 偏頗行為否認の根拠となるのは、債権者間の平等の確保であるが、 新規に出えんして債権を取得する者については、従来の責任財産の …

共有物分割(数ヶ所に分かれて存する不動産)

1 数ヶ所に分かれて存する多数の共有不動産を民法258条 により現物分割をする場合においても、上記不動産を一括 して分割の対象とし、分割後のそれぞれの部分を各共有者の 単独所有とすることが許される。(昭62.4.22 判タ1987-93) 2 分割の対象が多数の…

賃料相当損害金の財団債権としての利率

1 中途解約のついては、Xの請求を退けた。原状回復費用についても、 Xの請求を一部認容した。 2 賃料相当損害金については、再生手続開始決定がされた後、 再生債務者が不動産の明渡期限経過後も当該不動産の占有を継続した 場合には、それにより生じた…

抵当権と通行地役権

【判決要旨】 1 通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において、 最先順位の抵当権の設定時に、既に設定されている通行地役権に係る 承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されている ことがその位置、形状、構造等の物…

財団債権・共益債権の存否を巡る訴訟

1 (例えば、破産手続開始後の賃借物件の使用に伴う賃料請求が 破産法148条1項2号の財団債権に当たるかが争われた場合)の訴訟物は、 実体法上の給付請求権であるのか、それとも破産法148条1項2号に 基づく財団債権支払請求権なのかの問題がある。 財団不足…

予備的届出(破産債権)

1 民事訴訟法上許されている予備的併合または予備的反訴に準じるもの については、予備的届出として許される。 主位的請求が認容された場合には当該届出の効力を失わしめる趣旨の 届出のうち、主位的請求が破産手続に密接の関連するもので、 かつその認容お…

1【第202条】2 民事訴訟規則 [尋問の順序]【第113条】 1 当事者による証人の尋問は、次の順序による。 (1)尋問の申出をした当事者の尋問(主尋問) (2)相手方の尋問(反対尋問) (3)尋問の申出をした当事者の再度の尋問(再主尋問) [質問の制限]【…

自賠責の支払基準の拘束力

1 自動車損害賠償保障法16条1項に基づいて被害者が保険会社に対して 損害賠償額の支払を請求する訴訟において、裁判所は、同法16条の3第1項が 規定する支払基準によることなく損害賠償額を算定して支払を命じることが できる。(判タ 1207-70、最高裁 平18.…

明示的一部請求と残部についての消滅時効の中断 (判タ 1390-136、最高裁平25.6.6第一小法廷判決)

1 数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示した訴え に係る訴訟において、債権の一部が消滅している旨の抗弁に理由がある と判断されたため、判決において上記債権の総額の認定がされたとしても、 当該訴えの提起は、残部について、裁判…

相続開始後の相続財産(不動産)の管理・使用に関する相続人間の訴訟 (判タ1390-5)

1 相続開始の相続財産に関する相続人間の訴訟においては、 相続財産に不動産が含まれる場合に、不動産の占有者に対する 明渡請求、賃料相当額の不当利得返還、損害賠償請求、賃料を 収受した相続人に対する不当利得返還、損害賠償請求などが されることがあ…

「賃借人の譲渡」について問題となる場合

1 賃借地上建物の賃貸等 2 賃借人たる会社の経営者交代等 3 土地賃借権の準共有持分の譲渡 4 賃借地上建物の担保目的による買戻特約付売買 5 賃借地上建物の譲渡担保 6 離婚に伴う財産分与 背信性のない賃借権譲渡とする見解も有力であるが、離婚に伴…

反対尋問を経ない陳述書の実質的証拠力

1 当事者尋問・証人尋問において反対尋問を受けていない人物の作成 に係る陳述書が証拠として提出されている場合、当該陳述書のうち 当事者間に争いのある事実についての記載部分の実質的証拠力は 一般的に低いものと考えられており、裁判所が陳述書におけ…

「遺憾の意を表する」との和解条項

1 当事者の一方(被害者側)が、相手方当事者(加害者側)による謝罪 文言を入れるよう求め、相手方当事者(加害者側)がこれを拒否する ケース(それゆえになかなか和解に至らないケース) 2 実務上、明確な謝罪には至らないものの「遺憾の意を表する」と…

弁論終結後の和解

1 (1)和解期日で和解を成立させる方法 (2)裁判所が弁論を再開して事件を弁論準備手続に付した上で、 弁論準備手続期日で和解を成立させる方法 (3)17条決定を用いる方法2 裁判所が弁論を再開して事件を弁論準備手続に付した上で、 弁論準備手続期日で…

準備書面の書き方の工夫の一例

1 定量的な表現を用いることで、読み手によって受け取るイメージの 異なる定性的な表現を排除する。2 たとえば、不法行為による損害賠償請求訴訟において、 被害が甚大であり云々と書くよりも、被害の具体的な内容を詳細に 書くことでその甚大さが読み手に…

書面による準備手続

1 書面による準備手続とは、当事者の出頭なしに準備書面の提出等により 争点及び証拠の整理をする手続をいう。 2 当事者(代理人弁護士)双方ともに裁判所から 遠隔の地に居住している(ないし事務所ある)等の場合には、 いずれの当事者(代理人弁護士)…