【判決要旨】
1 通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合において、
最先順位の抵当権の設定時に、既に設定されている通行地役権に係る
承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用されている
ことがその位置、形状、構造等の物理的状況から客観的に明らかであり、
かつ、上記抵当権の抵当権者がそのことを認識していたか又は認識する
ことが可能であったときは、通行地役権者は、特段の事情がない限り、
登記がなくとも、買受人に対し、当該通行地役権を主張することが
できる。(判タ1391-131、最判平25.2.26判決)
2 原判決は、Y所有地の担保不動産競売による「売却時」に、
本件通路は、外形上通路として使用されていることが明らかであり、
Yが、Xらが所有するなどする土地上の工場に出入りする車両等が
本件通路を使用することを認識していたか又は容易に認識し得る状況
にあったことなどから、Yは、Xらに対して地役権設定登記の欠缺を
主張するについて正当な利益を有する第三者には当たらず、Xらは、
Yに対し、通行地役権等を主張することができるとにした。
3 最高裁は、通行地役権の承役地が担保不動産競売により売却された場合
において、「最先順位の抵当権の設定時」に、既に設定されている通行
地役権に係る承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として使用
されていることが客観的に明らかであり、かつ、上記抵当権の抵当権者
がそのことを認識していたか又は認識することが可能であったときは、
特段の事情がない限り、登記がなくとも、通行地役権は上記の売却に
よっては消滅せず、通行地役権者は、買受人に対し、当該通行地役権を
主張することができると解するのが相当であるとした。
4 通行地役権者が承役地の買受人に対して通行地役権を主張すること
ができるか否かは、最先順位の抵当権の設定時の事情によって判断さ
れるべきものであり、担保不動産競売による土地の売却時における事情
から、当然に、通行地役権者が買受人に対し、通行地役権を主張するこ
とができると解することは相当でないとして、担保不動産競売による
土地の売却時における事情を基盤として判断をした原判決を破棄した。
5 最二小判平10.2.13 判タ969号119頁は、通常の譲渡において、
譲渡の時に、承役地が要役地の所有者によって継続的に通路として
使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、譲受人がそのこと
を認識していたか認識することが可能であったときは、譲受人は、
地役権設定登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に
当たらないとして、登記を有しない通行地役権者と土地の取得者との
利益の調整を図っている。
6 しかし、担保不動産競売においては、原則として、最先順位の抵当権の
設定時を基準時として、買受人が引き受ける用益権の有無、内容が決定
され、最先順位の抵当権設定後に設定された用益権は、担保不動産競売
の売却によりその効力を失うと考えられる。
本判決は、このことを踏まえた上で、最先順位の抵当権の設定時を
基準時として、通行地役権について前記の最高裁判決で示された理を
適用。