財団債権・共益債権の存否を巡る訴訟

1 (例えば、破産手続開始後の賃借物件の使用に伴う賃料請求が
  破産法148条1項2号の財団債権に当たるかが争われた場合)の訴訟物は、
  実体法上の給付請求権であるのか、それとも破産法148条1項2号に
  基づく財団債権支払請求権なのかの問題がある。
  財団不足の場合には財団債権相互間の優先性(破152条)の問題が生じる。
  各倒産手続法上の規定に基づく財団債権・共益債権支払請求権であると
  解するのが相当である。


2 実体法上の給付請求権の存在は認められるが、それが財団請求権であると
  は認められない場合、裁判所は、財団債権不存在確認請求の認容判決を
  することになる。
  しかしながら、訴訟物を実体法上の給付請求権であると解する限り、判決
  理由中で実体法上の給付請求権の存在を認めながら、判決の確定により
  実体方上の請求権の不存在につき既判力が生じる(民訴114条)という奇妙
  な結論になる。
  そのような観点からも、財団債権・共益債権の存否を巡る訴訟の訴訟物は、
  各倒産手続法上の規定に基づく財団債権・共益債権支払請求権と解するの
  が相当であると考える。


3 要件事実は、実体法上の給付請求権に加え、当該請求権が財団債権・共益
  債権に当たることの具体的事実ということになると考えられる。


4 審理の結果、裁判所は債権者主張の債権が財団債権・共益債権ではなく破産
  債権・再生債権・更生債権であるとの心証に達した場合、請求棄却判決では
  なく訴え却下の判決をしている例が多い。
  しかしながら、訴えの却下ではなく請求棄却とするのが相当である。
  東京地判平成23.9.29判例秘書登載は、原告が更生会社の管財人に対し共益
  債権又は開始後債権として不当利得返還請求をした事案において、原告主張
  の債権は更生債権に当たり、共益債権又は開始後債権には当たらないとして
  請求棄却判決をしている。