再生債権として届出された共益債権

1.民事再生法上の共益債権に当たる債権を有する者は、当該債権につき再生債権として届出がされただけで、本来共益債権であるものを予備的に再生債権であるとして届出をする旨の付記もされず、この届出を前提として作成された再生計画案を決議に付する旨の決定がされた場合には、当該債権が共益債権であることを主張して再生手続によらずにこれを行使することは許されない。(最第一小判平成25年11月21日、判タ1404号92頁)
2.本件の事実関係等
(1)A社はB社との売買契約において前受金を受領したが、再生開始決定後、本件売買契約が解除された(民再法49条1項)。B社が本件前受金の返還債権等を再生債権として届け出た(下記(3)参照)。
(2)A社の保証人となっていたX(銀行)は、B社に代位弁済をし、本件前受金の返還債権等が共益債権であると主張して本件訴訟を提起した。
(3)上告人Xが有する本件前受金返還債権等は、民事再生法上の共益債権に当たるが(同法49条5項において準用する破産法54条2項)、これにつき再生債権として届出がされただけで、本来共益債権であるものを「予備的に」再生債権であるとして届出をする旨の「付記」はされていなかった。
3.当該債権の個別的権利行使を制約する見解は、
第1に、当該債権は、倒産実体法上、再生債権となり、共益債権として権利行使することができなくなるとする見解、
第2に、当該債権は、手続法上、再生債権として扱われることとなり、共益債権として権利行使することが許されなくなるとする見解、
第3に、当該債権が共益債権であることを主張して、これを訴訟において請求することが信義則等により許されないとする見解である。
4.本判決は、再生計画案の確定及び再生手続の安定を図るという観点から、前記の届出を前提として作成された再生計画案につき付議決定がされた場合には、その後に当該債権につきこれを共益債権として再生手続によらずに行使することは不適切であって許されないと判断したものであり、共益債権の権利行使に関して手続的な制約が生ずるとする見解(第2)を採用したものと解される。