保証人の事前求償権

1 全部履行義務者も事前求償権の届出(破産手続参加)が可能であるので(法104-3)
  主債務者について破産手続開始決定があった場合に、全部履行義務者である
  保証人も事前求償権の届出が可能である。
  ただし、主債権者が債権届出(破産手続参加)をしている場合は、
  この限りではない(法104-3ただし書)。


2 債権者が既に破産債権の届出をしている場合
ア)破産法104条3項ただし書により、保証人は権利を行使することができないとして、
  事前求償権の全額について異議を述べる。

イ)委託を受けた保証人は主債務者に対してあらかじめ求償権を行使することができ
  (民460(1))、この求償権は将来の求償権ではなく、法104条3項ただし書の適用
  は受けないので、債権の発生原因及び額が認められる場合には、全額を認めて
  差し支えないが、届出債権者に対する注意喚起のため、認否書の備考欄に
  「債権者○○○○届出につき、配当から除かれる。」と記載する。


3 債権者が破産債権の届出をしていない場合 
(実務では以下のような運用例がある)
ア)将来、債権者から債権の届出がなされる可能性があれば、
  二重に債権を確定されないよう、事前求償権の届出については
  異議を述べておく(債権調査期日前に債権者からの届出の有無を確認し、
  届出がない場合には異議を撤回するという方法をとることもある。)。

イ)債権調査期日が続行される限り、認否を留保しておく。

ウ)債権の発生原因及び額が認められる場合には、
  全額を認めれ差し支えないが、誤配当の防止及び届出債権者に対する
  注意喚起のため、認否書の備考欄に「債権者○○○○が届出をした場合は、
  配当から除かれる。」と記載する。


4 破産手続開始決定後に、保証人が一部弁済した場合
手続開始時現存額主義により、債権者の破産債権額に影響を及ぼさず(法104-2)、
債権者は破産手続開始決定時に有していた債権全額を破産債権として行使できる。

これに対し、一部弁済した保証人は、その求償債権について破産債権者として
権利を行使することはできない(法104-4)ので、保証人の求償債権の届出には
異議を述べることになる。

ただし、実務においては、一部弁済の場合であっても、債権者と一部弁済者の
連名による名義変更届出書が提出される場合がある。
この場合、債権者の権利放棄あるいは当事者の順位を同順位とする合意ないし
届出債権者が優先権を主張しない届出と解し、債権者から一部弁済者への名義
変更を認めている。


5 破産手続開始決定後に、第三者が弁済した場合
全部履行義務者でない第三者から弁済があった場合、法104条2項の適用はなく、
債権者の行使し得る破産債権は弁済額だけ減少し、第三者が破産債権を行使で
きる。