2016-01-01から1年間の記事一覧

原告の被告に対する不貞慰謝料請求権が破産法253条1項2号所定の非免責債権に該当しないとされた事例(東京地裁H28.3.11判タ1429号234頁)

1 被告は、破産手続開始(免責許可)申立において、原告から不法行為(原告の夫との不貞関係)による損害賠償請求権を破産債権として挙げており、破産手続開始決定及び免責許可決定を受けた。原告は、同損害賠償請求権は、破産法253条1項2項の非免責債…

筆界特定を行った事案についての裁判例の動向(法務省民事局付検事・民事第二課担当者)(判タ1429号40頁)

1 筆界特定の年間申請件数は、毎年2500件前後と安定して推移している。 2 筆界特定手続は、対審構造ではなく、対象土地(筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する土地)の他方の所有者は、相手方とはならない(関係人として意見提出等の機会は保障されて…

いわゆる花押を書くことは、民法968条1項の押印の要件を満たさない(最二小判平成28年6月3日判タ1428号31頁)

1.本件は、相続人Xが遺言者Aが所有していた土地について、主位的にAから遺贈を受けた、予備的にAとの間で死因贈与契約を締結したと主張して、相続人Yらに対し、所有権に基づき、所有権移転登記手続を求めるなどした事案である。Aが作成した本件遺言書には…

破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権と破産財団への帰属(判例タイムズ No.1426 p32)

1.判決要旨 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は、破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するも…

被相続人の生前に引き出された預貯金等をめぐる訴訟(判例タイムズ No.1414 p74)

一 法律上の問題点について 1 不法行為構成における法律上の問題点 2 不当利得構成における法律上の問題点 3 遺産分割手続との関係における法律上の問題点 二 事実認定上の問題点 1 預貯金の帰属 2 預貯金の引出行為 3 預貯金引出権限の存否 4 払戻金…

介護事故による損害賠償請求訴訟の裁判例(判例タイムズ No.1423 p78〜)

第1 過失又は安全配慮義務違反 1 転倒 2 転落 3 誤嚥 4 異食 5 褥瘡 6 徘徊・無断外出 7 搬送義務・転送義務等 8 身体拘束 9 入浴に関する事故(転倒以外) 10 暴行等 第2 慰謝料額 第3 その他の争点 1 過失相殺 2 素因減額 3 契約条項の解…

保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合における共同保証人間の求償権の消滅時効中断の有無(最一小判H27.11.19判タ1721・108)

1.本件は、借入金債務を代位弁済したXが、他の共同保証人であるYに対し、民法465条1項、422条に基づき、求償金残元金と遅延損害金の支払を求めた事案である。 2.Yが求償権の時効消滅を主張した。これに対し、Xは共同保証人間の求償権は主たる…

高齢者のした養子縁組を無効とした原判決を取り消し有効とした事例(東京高判平成25年9月18日判タ1421・140)

1.本判決は、次の3点を重視した。 (1)第1点目は、養親(高齢者)の精神状態の程度である。 本判決は、養親は軽度の認知症であるものの、養子縁組という行為の意義を理解できないほどではないと判断した。 (2)第2点目は、養親が養子縁組を行う動機であ…

自筆証書遺言の文面全体への線引き(民法1024条前段)

1.遺言者自筆証書である遺言書に故意に斜線を引く行為は、その斜線を引いた後になおもとの文字が判読できる場合であっても、その斜線が赤色ボールペンで上記遺言書の文面全体の左上から右下にかけて引かれているという判示の事実関係の下においては、その…

仮差押開放金の取戻請求権に対する差押えが競合した場合の民事執行法165条1号配当要求の終期(東京高決平25・12・27判タ1419・142)

1.債権執行の手続において配当又は弁済金の交付を受けるべき債権者は、民事執行法165条各号所定の時(配当要求の終期)までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者である(同上柱書)。そして同上1号は、法156条1項又は2項の規定によ…