仮差押開放金の取戻請求権に対する差押えが競合した場合の民事執行法165条1号配当要求の終期(東京高決平25・12・27判タ1419・142)

1.債権執行の手続において配当又は弁済金の交付を受けるべき債権者は、民事執行法165条各号所定の時(配当要求の終期)までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者である(同上柱書)。そして同上1号は、法156条1項又は2項の規定により、第三債務者が差押えに係る金銭債権の金額ないし差し押さえられた部分に相当する金銭の供託をした時を配当要求の終期として定めている。
2.供託金払渡請求権が差し押さえられた場合については、第三債務者である国(供託所)が改めて供託手続を行わないので、どの時点をもって同号の配当要求の終期と解すべきかが問題となる。
3.供託金払渡請求権に対する差押えが競合した場合には、供託所は供託義務を負うことになると解されるが(法156条2項)、供託所が供託をするといっても自分自身の所に供託するだけであるから、観念的な供託に過ぎず、実際上はそのまま供託を持続し、法156条3項により執行裁判所に事情届をすることとなる。
4.そこで、法165条1号の「供託をした時」は、「供託義務を生じた時」と解するのが最も適切である。そして、供託義務が生じた時とは、(1)供託金払渡請求権について競合する差押命令もしくは仮差押命令の送達を受け、または配当要求があった旨を記載した文書の送達を受けたこと、(2)供託金払渡請求に応ずることができる状態にあること、の2つの要件が備わった時に生ずるものとされる。