滞納処分の差押(債権)との競合

1 第三債務者の陳述等により,執行裁判所がその滞納処分の存在を知ったときは,裁判所書記官は,差押命令が発せられた旨を当該滞納処分による差押えをした徴収職員等に対して通知しなければならない(滞調20条の3第2項,20条の10)


2 【徴収職員等の取立て及び残余金の処理】
滞納処分による差押えが先行しているので,滞納処分による差押えをした徴収職員等は,差し押さえた債権の取立てをすることができる(国徴67条)


3 実務では,金銭債権の一部を差し押さえることによってその差押えに係る国税の全額を徴収することが確実であると認められる場合を除き,その全額を差し押さえる運用がされている(国徴63条)から,全額差押えがされている場合には,徴収職員等は,原則として差押債権の全額を取り立てる運用がされている


4 滞納処分庁の行う配当手続は,当該滞納処分庁及びその他の租税官庁間においてのみ配当が実施され(国徴128条2項),民事執行による差押債権者等に対しては,配当は実施されない。したがって,滞納処分庁は,自ら実施した配当の結果に応じ,後行の差押えをしている執行裁判所に対し残余金通知をしなければならない。


5 徴収職員等が残余金を執行裁判所に交付する場合は,残余金交付通知書及び添付すべき書面(残余金計算書)を添付し,残余金(現金)を添えて行う。執行裁判所は,残余金を保管金として受け入れる。


6 【第三債務者への供託】
滞納処分による差押えのされた債権について,民事執行による差押えがされたときは,差押債権の全額に相当する金銭を供託することができる(滞調20条の6第1項,20条の10)



7 徴収職員等は,供託金のうち滞納処分による差押えの額に相当する部分(債権の全部)について還付請求することができる。


8 徴収職員等は,還付を受けた後配当を実施した結果,滞納者(執行債務者)に交付すべき残余金が生じたときは,これを執行裁判所に交付しなければならない(滞調20条の8第1項,6条1項,20条の10)残余金の交付を受けた執行裁判所は,直ちに配当等の手続を実施する(滞調20条の7,20条の10)