2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

社外労働者と労働契約の成否(判タ1328-53)

1 労働者供給事業は、労働の強制、中間搾取や使用者責任が不明確であること など、弊害を伴いがちであることから、職業安定法44条で禁じられている。 昭和60年、労働者派遣法が制定され、一定の範囲で企業が労働者派遣業者 から労働者の派遣を受けることが…

建物建築請負人の請負代金債権と敷地の商事留置権(金法1906-75)

◇ 東京高裁 平22.7.26決定1 理由の第1は、商法521条の「物」には不動産が含まれないという解釈で ある。 2 理由の第2は、「商行為によって自己の占有に属した」の解釈である。 本決定は、建物建築請負人が建物建築のために敷地を占有する場合、その所有 …

外国通貨金銭債権(§103-2(2) 2項1号ロ

1 外国通貨金銭債権については、破産手続開始時の為替相場に従ってその破産 債権額を国内通貨で評価する。 2 我が国の相場を基準とすることが妥当である。 破産債権者が邦貨による評価を行わず、外国通貨によって破産債権の届出を した場合の取扱いについ…

否認の登記

1 否認の登記がされるのは、「登記の原因である行為が否認されたとき」また は「登記が否認されたとき」である。160条から162条までを理由として登記の 原因である行為が否認された場合が前者の例であり、164条を理由として物権 変動の対抗要件である登記が…

明渡猶予と引渡命令

1 代金納付から6ヶ月の明渡猶予を受けられる典型例としては、抵当権に後れ る賃貸借に基づき建物を占有する者、抵当権に後れる賃貸借がその後期間満了 し更新された賃借権に基づき占有する場合の占有者、担保不動産収益執行の手 続や、強制管理の手続におい…

素因減額(判タ1326-38)

1 最三小法平8.10.29(首長判決) 被害者が平均的な体格ないし通常の体質と異なる身体的特徴を有していたと しても、それが疾患に当たらない場合には、特段の事情の存しない限り、被害 者の右身体的特徴を損害賠償の額を定めるに当たり勘酌することはできな…

医療法人と退社社員の払戻し(判タ1327-75)

◇医療法人の定款に当該法人の解散時にはその残余財産を払込出資額に応じて 分配する旨の規定がある場合において、同定款中の退社した社員はその出資額 に応じて返還を請求することができる旨の規定は、出資した社員は、退社時に 当該法人に対し、同時点にお…

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託と遺留分減殺(判タ1327-18)

1 後継ぎ遺贈型受益者連続信託とは、「受益者の死亡により、当該受益者の 有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者 の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む)のある信託」 (信託法91条) 2 例えば、委託…

支払の停止を要件とする否認の制限(法166)

1 支払不能と異なって支払停止は、破産者の継続的経済状態ではなく、一回的 行為であり、破産手続開始からみて合理的範囲を超えて否認の可能性をさかの ぼらせることを認めるのは、取引の安全を害する結果となる。 2 有害性が強い無償行為否認(160③)〔§1…

交通事故と破産(判タ1326-54)

1 目次 被害者の破産と損害賠償請求権の帰属 破産といわゆる被害者請求権の帰すう 既払金の処理 加害者が破産 2 慰謝料 ① 差押禁止財産か ② 最大判昭42.11.1、判タ211-224 帰属上の一身専属性を否定した。 最一小判昭58.10.6、判タ513-148 名誉侵害を理由…

◇ 重大な瑕疵がありこれを建て替えざるを得ない場合に、当該建物に居住して いたという利益を損益相殺等の対象として損害額から控除することの可否 −平22.6.17第一小法廷判決(判タ1326-111)− 〔Xらは、Y1から鉄骨スレート葺3階建ての居宅(本件建物)…

賃貸借と差押(物件明細書)

1 具体的な事例の判断においては、抵当権設定日、賃借権の締結日・対抗要件 具備日、差押登記日等、判断の基準となる年月日順に整理し、慎重に検討しな ければならない。 2(1) 平成15年改正前の民法395条が適用される賃借権 ① 平成16年3月31日までに締結さ…