建物建築請負人の請負代金債権と敷地の商事留置権(金法1906-75)

◇ 東京高裁 平22.7.26決定

1 理由の第1は、商法521条の「物」には不動産が含まれないという解釈で
 ある。


2 理由の第2は、「商行為によって自己の占有に属した」の解釈である。
 本決定は、建物建築請負人が建物建築のために敷地を占有する場合、その所有
 権をたまたま注文主が有していたとしても、当該敷地は、「商行為によって
 自己の占有に属した」とはいえないとした。


3 東京高裁管内ではこの論点について決着が着いたかに見えたが、東京地裁
 民事第21部は、本件においても商事留置権の成立を前提とする評価を命じた。
 その趣旨は、買受人が予期せぬ損害を被る可能性があるから、債権回収という
 担保権実行手続の目的実現を後退させることもやむを得ない。


4(判旨)
  商人間の留置権は、継続的な取引関係にある商人間において、流動する商品
 等について個別に質権を設定する煩雑と相手方に対する不信表明をさけつつ、
 債権担保の目的を達成することにより、商人間の信用取引と安全と迅速性
 を確保することをその制度趣旨とするものである。