社外労働者と労働契約の成否(判タ1328-53)

1 労働者供給事業は、労働の強制、中間搾取や使用者責任が不明確であること
 など、弊害を伴いがちであることから、職業安定法44条で禁じられている。
  昭和60年、労働者派遣法が制定され、一定の範囲で企業が労働者派遣業者
 から労働者の派遣を受けることが法的に承認されると同時に、規制が施される
 こととなった。


2 労働者派遣は、①雇用契約は、派遣元企業と締結すること、②派遣先企業の
 業務に従事すること、③業務に関する指揮命令権は派遣先企業が有することを
 特徴とする。


3 業務処理請負は、①雇用契約は請負企業(以下便宜上「派遣元企業」と
 いう。)と締結すること、②発注企業(以下便宜上「派遣先企業」という
 。)の業務に従事すること、③業務に関する指揮命令権は派遣元企業が有する
 (派遣先企業は、指揮命令を行わない。)ことを特徴とする。
  業務処理請負において、使用者責任を負うのは派遣元企業のみであり、派遣
 先企業には責任が生じない。
  また、労働者派遣法による規制も受けない。


4 偽装請負とは
  業務処理請負や業務委託の契約形式で行われる社外労働力の利用であるが、
 その実態は、労働者派遣法の規制する「労働者派遣」又は職業安定法の規制
 する「労働者供給」であるものをいう。


5 期間の定めのある雇用契約において、労働者が所定の契約期間を経過しても
 労働を継続し、使用者がこれに異議を述べないときは、契約が同一の条件を
 もって更新されたものと推定される(民法629条1項)。したがって、雇用契約
 を終了するには、更新拒絶をする必要が生じる。この更新拒絶を、「雇止め」
 という。


6 最二小判平21.12.18は、事案において
  黙示の雇用契約の成立を否定した。
  ① YはAによるXの採用に関与していたとは認められないのであり、
  ② XがAから支給を受けていた給与等の額をYが事実上決定していた
    といえるような事情もうかがわれず、
  ③ Aは、配置を含むXの具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る
    地位にあった。