◇大阪高裁、平22.5.21判決(金法1899)
1 民法501条の代位の趣旨について、「代位弁済者の債務者に対する
求償権を確保することを目的として、弁済によって消滅するはずの
原債権及びその担保権を代位弁済者に移転させ、代位弁済者がその
求償権を有する限度で移転した原債権及びその担保権を行使する
ことを認めるものである。
2 民法は手続法ではなく実体法であることに鑑みれば、民法501条
柱書の「自己の権利に基づいて求償をすることができる範囲内」
とは、求償権が存する場合にその求償できる上限の額の範囲内、
すなわち実体法上の制約の範囲内を意味していると解すべきであ
り、それ以上に、上記「範囲内」が手続法上の制約を含むとみる
ことは、実体上の解釈として疑問がある」
3 民事再生法の観点から、「代位弁済者が民事再生法上の共益債権
を弁済したものである場合には、当該共益債権の性質、当事者間
及び他の債権者との公平等の見地からして、代位弁済者が民事再生
手続によることなく上記共益債権(原債権)を行使することが相当
でないと判断すべき場合もあり得る」
4 もともとAが民事再生手続外で行使することができる債権であっ
た以上、財団が不当に減少するわけではなく、他の再生債権者が
損失を被るわけでもないのであるから、Aが本件請求権を行使する
場合に比べ、関係者に不利益を及ぼすことにはならない。
財団が増加し、他の再生債権者が予想外に多額の弁済を受ける
ことが可能となる反面、Xは、損失を被ることになる。