小規模個人再生と詐害行為取消権

1. 再生手続が開始された後は、債権者間の公平を図るために、再生債権の個別的な権利行使は許されないものとして、債権者が再生手続外で別途、詐害行為取消権を行使することはできないと解するのが相当
(東高判22.12.22、判タ 1348-243)
2. 通常の再生手続では、再生手続開始の決定があったときは、再生債務者の財産関係の訴訟手続のうち再生債権に関するものは中断し(民事再生法40条1項)、再生債権者の提起した債権者代位訴訟や詐害行為取消訴訟に係る訴訟手続も中断する(法40条の2第1項)
3. 個人再生手続の開始時点で再生債権に関する訴訟手続が係属中であっても、その訴訟手続は中断しない。個人再生手続における再生債権については、同手続内で実体的に確定する手続がないため、訴訟を継続する必要があるからである(再生債権の評価手続は、議決権や最低弁済額の算定の基礎となる再生債権等を個人再生手続内で確定させるにとどまる。)
4. 再生手続開始後に再生債権者が新たに詐害行為取消訴訟を提起することの可否については、直接言及した規定はなく、問題となるところである。
5. 個人再生手続では、個人債務者の簡易迅速な経済的再生を実現するという目的から否認権制度は採用していないが、再生手続開始申立ての棄却、再生手続廃止、再生計画不認可とするなど、債権者の利益を保護する手続的保証があり、債権者に詐害行為取消権を行使させる必要性は認められない
6. 詐害行為取消訴訟の中断規定は否認権制度を前提としたものであり、上記のとおり、小規模個人再生では否認権制度を採用せず、監督委員や管財人による訴訟受継の問題が生じないために同規定の適用が除外されたものと解される