別除権協定(民事再生)と破産(最第一小判平成26年6月5日判タ1414号88頁)

1.別除権の行使等に関する協定(別除権の目的である不動産につきその被担保債権の額よりも減額された受戻しの価格を定めて再生債務者が別除権者に対しこれを分割弁済することとし、再生債務者がその分割弁済を完了したときは別除権者の担保権が消滅する旨を再生債務者と別除権者との間で定めたもの)中にある再生手続廃止の決定がされること等を同協定の解除条件とする旨の合意は、再生計画の履行完了前に再生手続廃止の決定を経ずに破産手続開始の決定がされることが解除条件として明記されていなくても、これを解除条件から除外する趣旨であると解すべき事情がうかがわれないなど判示の事情の下では、再生債務者が上記破産手続開始の決定を受けた時から同協定はその効力を失う旨の内容をも含む者と解すべきである(判タNo1404-88頁)。
2.本件は、配当表の取消しを求める配当異議訴訟である。
3.X(破産管財人)は、本件各別除権協定により、別除権の目的である本件各不動産の受戻しの価格が定められ、各担保権の被担保債権の額がこれらの受戻価格に減額されたから、Yら(別除権者ら)は、これらの受戻価格から既払い金を控除した額を超える部分につき、配当を受ける地位にないと主張した。これに対し、Yらは、本件各別除権協定は破産手続開始の決定がされたことにより失効したと主張して争った。
4.原判決は、本件破産手続開始決定は本件解除条件条項で定められた解除条件のいずれにも該当せず、本件各別除権協定は失効していないとして、Xの請求を認容した。
5.別除権協定とは、民事再生法上の用語ではなく、実務上の呼称であるが、別除権者と再生債権者等との間で、別除権の基礎となる担保権の内容の変更、被担保債権の弁済方法、順調に弁済されている間の担保権実行禁止と弁済完了時の担保権の消滅等を定める合意をいい、別除権の目的財産の受戻しの合意や不足額確定の合意も別除権協定の一種であるとされている。
6.基本的には、本件各別除権協定という個別の契約の解釈の問題であるが、別除権者の利益と一般債権者間の公平のいずれを重視すべきかといった問題にも関わる。
7.なお、本件は、解除条件を定めた条項の解釈の場面であるため、別除権協定が解除された場合の効果に関する復活説・固定説の議論に直接影響されるものではない。