免責と執行文の付与

1.免責許可の決定が確定した債務者に対し、確定した破産債権を有する債権者が、当該破産債権が破産法253条1項各号に掲げる請求権に該当することを理由として、当該破産債権が記載された破産債権者表について執行文付与の訴えを提起することは許されない(平成26年4月24日第一小法廷判決 判タ1402号61頁)。

2.破産債権者表の記載は、破産者に対し、確定判決と同一の効力を有し、破産債権者は確定した破産債権について、当該破産者に対し、破産債権者表の記載により強制執行をすることができる(破産法221条)。すなわち、このような場合、破産債権者表が債務名義となり(民事執行法22条7号)、破産債権者は執行文の付与を受けて、強制執行をすることができる。

3.免責許可決定が確定した場合において破産債権者表があるときは、破産債権者表に免責許可決定が確定した旨が記載される(破産法253条3項)。

4.免責許可決定の確定後に、破産債権者が、破産債権者表に基づき強制執行をすることができるか、そのために執行文の付与を申し立てることができるかについては争いがある。

5.本判決は、本件のような執行文付与の訴えが許されない理由として、執行文付与の訴えについて規定した民事執行法33条1項の文言に照らし、その審理の対象は、同法27条1項にいう債権者の証明すべき事実の到来の有無又は同条2項にいう債務名義に表示された当事者以外の者に対し、もしくはその者のために強制執行をすることの可否に限られ、破産債権者表に記載された確定した破産債権が非免責債権に該当するか否かを審理することは予定していないとした。

6.本判決は、破産債権者表に免責許可決定が確定した旨の記載がされている場合であっても、破産債権者表の記載内容等から記載された確定した破産債権が非免責債権に該当すると認められるときは、裁判所書記官において単純執行文を付与することができるとする。

7.なお、破産債権者表等の記載からその債権が非免責債権であるとは認められず、執行文付与を受けられない場合、別途当該破産債権に基づく給付訴訟を提起し、当該債権が非免責債権であることを主張立証することができる。