抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合における当該抵当権自体の消滅時効(判タ1450号40頁)

1 破産法253条1項本文に規定する免責の法的性質については、自然債務説が通説であり、判例も自然債務説を前提としていると解されている。
 破産手続によらないで行使することができる別除権(破産法2条9項、65条1項)が免責の効力を受けないことは、当然のことであると解されている。
2 最三小判平成11年11月9日(判タ1017号108頁)は、「免責決定の効力を受ける債権は、債権者において訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなり、右債権については、もはや民法166条1項に定める『権利ヲ行使スルコトを得ル時』を起算点とする消滅時効の進行を観念することができないというべきであるから、破産者が免責決定を受けた場合には、右免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、その債務についての消滅時効を援用することはできないと解するのが相当である。」としていた。
3 本判決は、平成11年最判を参照した上で、免責許可の決定の効力を受ける債権についてはもはや消滅時効の進行を観念することができないことは、免責許可の決定の効力を受ける債権が抵当権の被担保債権である場合であっても異なるものではない旨を判断した。
4 次に問題となる抵当権自体の消滅時効につき、原審は、民法396条により、被担保債権が時効により消滅しないのであるから、その抵当権は時効により消滅しない、と判断していた。
 本判決は、民法396条はその文理に照らすと、被担保債権が時効により消滅する余地があることを前提としているものと解するのが相当とし、「抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には、民法396条は適用されず、債務者及び抵当権設定者に対する関係においても、当該抵当権自体が、同法167条2項所定の20年の消滅時効にかかると解するのが相当である。」とした上で、「本件根抵当権を行使することができる時から20年を経過していないことが明らかであるから、上告人の請求には理由がない」と判示した。