1 支払不能と異なって支払停止は、破産者の継続的経済状態ではなく、一回的
行為であり、破産手続開始からみて合理的範囲を超えて否認の可能性をさかの
ぼらせることを認めるのは、取引の安全を害する結果となる。
2 有害性が強い無償行為否認(160③)〔§160-6〕は、本条による制限の対象
外である(本条かっこ書)。
3 本条を支払不能についても類推適用するとの議論がある。
4 無償否認については、その相手方の取引の安全等を考慮する必要性に乏しく
、かつ、これについても同様の取扱いをすることにすると、支払の停止前6ヶ
月以内の行為にまで否認の範囲を拡張した意義を没却することになりますので
、否認を制限しないこととしている。
5 新法では、支払の停止があった後にされた行為を詐害行為(財産減少行為)
として否認する場合には、否認の要件を緩和し、破産者の詐害意思の立証を
不要としている。
しかし、支払の停止は、破産者が支払不能であることを外部的に表明したに
過ぎず、支払不能の微表事実として不確実な面があることは否定できない上
、否認の相手方において破産者の過去の財産状況についての立証をするのは困
難である場合が多いと考えられること等を考慮すると、受益者がこのように緩
和された要件の下で長期間否認のリスクを負うこととなるのは、相当でない。