1 最二小判昭39.7.29
債権の一部弁済たる「配当行為」を否認の対象としようとする場合、
判断の基準時は、強制執行の着手の時ではないと述べている。
受益者の悪意についても、判断の基準時は、配当行為の時と考えて
いるように読める。
2 法165条は、当然の事理について確認したものにすぎず、独立の
否認要件を定めたものではないから、偏頗行為否認の成否を判断する
のは、執行行為の否認の場合であっても、あくまで法165条の問題で
ある。
3 法162条1項1号の法文上「破産者が・・・・した行為」とあるところ、
その対象行為は、必ずしも破産者の行為であることを要しないが、
破産者の行為と同視されるものでなければならないとしても、債権者
の執行申立行為時まで遡って否認の要件を判断すべき論理的必然性
はない。
4 否認の要件は、債権者が実際に満足を得た時点(取立時、配当又は
弁済金受領時、転付時)で判断すべきである。
否認の要件は、債権者が実際に満足を得た時点で判断すべきである
とすることは、最二小判昭39.7.29の判断とも整合する。