1 受益者Yは、債権差押命令の申立てをした時点では支払停止につき善意でしたが、
債権の取立てをした時点では支払停止につき悪意となっていた。
2 債権差押命令申立時とする見解
この点、この問題を「否認しようとする行為が執行行為に基づくものであるとき」
(破165後段) の否認の問題であると位置づけ、受益者の支払停止等の
善意・悪意の基準時は、債権差押命令申立時とすべきであるという見解もある。
3 取立時とする見解
債権者は、債権差押命令が発令されただけでは満足を受けることができず、
取立てをしてはじめて満足を受けることができる。
差押債権者が執行機関(民執2)ではなく、差押債権者の取立ては執行行為とは
いえないので、本問は「否認しようとする行為が執行行為に基づくものであるとき」
(破165後段)には該当しないと解される。
4 判タ1342号28頁は、執行行為が介在している場合の否認の要件の
判断基準時は、債権者の執行機関への執行行為申立時ではなく、
債権者が実際に満足を得た時点(取立時、配当又は弁済金受領時、転付時)
とすべきであるとしている。