1 目次
被害者の破産と損害賠償請求権の帰属
破産といわゆる被害者請求権の帰すう
既払金の処理
加害者が破産
2 慰謝料
① 差押禁止財産か
② 最大判昭42.11.1、判タ211-224 帰属上の一身専属性を否定した。
最一小判昭58.10.6、判タ513-148 名誉侵害を理由とする慰謝料請求権
被害者の債権者は、これを差押えの対象としたり、債権者代位の目的とす
ることはできないものというべきである。他方、加害者が被害者に対し一定
額の慰藉料を支払うことを内容とする合意又はかかる支払いを命ずる債務名
義が成立したなど、具体的な金額の慰藉料請求権が当事者間において客観的
に確定したときは、右請求権についてはもはや単に加害者の現実の履行を残
すだけであって、その受領についてまで被害者の自律的判断に委ねるべき特
段の理由はないし、また、被害者がそれ以前の段階において死亡したときも、
右慰藉料請求権の承継取得者についてまで右のような行使上の一身専属性を
認めるべき理由がないことが明らかである。
③ 問題なのは、破産手続終結以前に慰謝料請求権の行使上の一身専属性の
喪失事由が生じた場合、破産法34条3項2号の規定を形式的に適用すれば、慰
謝料請求権も破産財団に属することになりそうであるが、果たしてそれが妥
当といえるのであろうか。
開始決定後に行使上の一身専属性の喪失事由が生じたとしても、破産法34
条3項2号ただし書の規定の適用がないという解釈をすることもできるのでは
ないであろうか。
(破産手続開始決定後に慰謝料請求権の一身専属性の喪失事由が生じた場合
、破産財団への帰属性について否定的な見解として-伊藤眞183頁)
3 後遺障害逸失利益
後遺障害逸失利益の賠償請求権が破産財団に属することを肯定する場合、
破産者である交通事故の被害者の経済的更生の点をどう考えるかが問題であ
る。
破産財団に属するとした上で、上記の問題の調整のために自由財産の範囲
の拡張の制度を用いるのが相応しいのではないかと思われる。
4 介護費用
介護費用の賠償請求権は新得財産であるという説明が考えられる。
発生原因である交通事故自体は破産手続開始決定前に生じているので、
新得財産という説明は困難であると思われる。
介護費用の賠償請求権が新得財産又は差押禁止財産に当たるという解釈が
できないとしても、自由財産の範囲の拡張が認められることについて異論は
ないであろうと思われる。
5 加害車両が自転車等であり、加害者が損害責任保険に加入していたが、保険
契約の約款上直接請求権の定めがない場合、現在では保険法22条の規定により
責任保険につき、被害者である損害賠償請求権者の保険金請求権に対する先取
特権が定められた。