1 たしかに稼働利益に対応する利益の給付とも言えないことはないが、
休業による損害を填補するという性質もなく、損害賠償請求権の代位
規定もないので、損害額から控除するべきではない。
2 失業保険は政府管掌のもとに、被保険者及び被保険者を雇用する事業主の
支払う保険料と国の負担する給付費用により運用されているものであり、
かつ失業保険法には失業が第三者の加害行為に起因する場合において政府
が加害者に対して保険給付額の償還を求めうる規定は存しないから、原告
の受領した右の失業保険金を損害賠償の義務者である被告の利益のために
損害相殺することは正当でない。
(神戸地判 昭45.11.18)
3 法律上は、失業した被保険者の生活の安定を図る社会保障制度の一種であり、
失業による被保険者の損害の填補を目的とするものではない。
(東京地判 昭47.8.28)
4 実質上被害者の休業損害が軽減される結果となることは否定できないけれども、
失業保険は被保険者の生活の安定を計ることを目的とする社会保障制度の一種
であり、被保険者の損害の填補を直接の目的としているものではない。
(福井地判 昭48.12.24)