1 本決定の要旨
(1)本決定は、「債権者が被保全債権について確定判決等の債務名義を有している
場合には、債権者は、遅滞なくこの債務名義をもって強制執行の手続をとれば、
特別の事情がない限り、速やかに強制執行に着手できるのが通常であるから、
原則として、民事保全制度を利用する権利保護の必要性は認められない。
(2)債権者が被保全債権について債務名義を有している場合であっても、
債権者が強制執行を行うことを望んだとしても速やかにこれを行うことができ
ないような特別の事情があり、債務者が強制執行が行われるまでの間に財産を
隠匿又は処分するなどして強制執行が不能又は困難となるおそれがあるときには、
権利保護の必要性を認め、仮差押えを許すのが相当である。
2 瀬木・西山は、本件のような場合は権利保護の必要性の問題ととらえるのに対し、
別の見解では、保全の必要性の問題ととらえているように思われる。
3 抗告人は、破産者株式会社Aの破産管財人であり、破産者の有する執行力の
ある債務名義(公正証書)により本件仮差押債権に対し債権執行を行なうには、
抗告人への承継執行文を得て、かつ、これを公証役場から相手方に送達し、
その送達証明書を添付して債権執行の申立てを行なわなければならない。
4 本件仮差押債権の弁済期限が平成24年12月10日であることから、
第三債務者から弁済を受けるまで送達を受領しない等するおそれがあると
いうべきであるから、債権者において、債権執行を速やかに行なうことが
できず、これが不能又は困難となるおそれがあり、上記特別な事情がある
場合に当たると認めるのが相当である。
5(平24.11.16 第一審命令 平成24.11.29 抗告審決定)