高齢者のした養子縁組を無効とした原判決を取り消し有効とした事例(東京高判平成25年9月18日判タ1421・140)

1.本判決は、次の3点を重視した。
(1)第1点目は、養親(高齢者)の精神状態の程度である。
 本判決は、養親は軽度の認知症であるものの、養子縁組という行為の意義を理解できないほどではないと判断した。
(2)第2点目は、養親が養子縁組を行う動機である。
 本判決は、養子らと養親は義理の親子として長年同居生活を送ってきたものであり、このような生活関係からすれば、養子らから法律上の親子関係の形成を求められた場合に、養親がこれに応じることは自然なことであるといえるとした。
(3)第3点目は、署名欄の筆跡である。
 本判決は、本件養子縁組届の署名欄の筆跡が養親のものとされる筆跡と酷似しているとした。
2.本件の背景には、死亡した養親の遺産相続を巡り、養親の兄弟姉妹と養子(養親と同居生活を送っていた養親の義理の子)の確執が窺える。
3.養子縁組には、実際に養子関係を形成する実質的な意思が必要なところ、その意思能力の程度は、親子という親族関係を人為的に設定することの意義を常識的に理解することができる程度で足りるとされている(東京高判昭60.5.31判時1160号91頁)。