姉弟間の建物所有を目的とする土地の使用貸借につき、使用収益をするのに足りるべき期間が経過したとして、契約終了に基づく建物収去土地明渡請求が認められた事例(東京地裁平成28年7月14日判タ1436号196頁)

1 本件は、国有地の払い下げ時に所有名義人となった姉が、同土地上に約40年間建物を所有し自宅兼仕事場として使用してきた弟に対し、弟が本件土地を使用収益するのに足りる期間を経過したと主張して、建物収去土地明渡を求めたものである。
2 使用貸借契約における使用収益をするのに足りるべき期間の経過に関する判例としては、契約締結後38年8か月もの長期間が経過し、この間に貸主と借主の間の人的つながりの状況が著しく変化したという事実関係のもとでは、借主に他に居住するところがなく貸主に土地を使用する必要等特別の事情が生じていないというだけでは、使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定することができないとするものがある(最一小判平成11年2月25日判タ998号113頁)。
3 本判決は、上記判例の枠組みに従って、具体的事情を検討した上で、(1)本件建物の建築からすでに40年以上もの長期間が経過しており、原告(姉)が本件土地の所有権を取得して以来何らの収益も得ていない一方で、被告(弟)は自宅や動物病院(仕事場)の敷地として十分に活用し相応の利益を得てきたこと、(2)本件土地を巡る原告と被告の対立が表面化し、その人的関係に著しい変化が生じたことなどから、被告が本件土地の使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定することはできないとして、原告の請求を認容した。
4 被告は、本件土地使用の必要性等の事情を主張したが、判旨は、「被告らが指摘する諸事情を十分考慮してみても、本件使用貸借契約の当事者間の信頼関係の破壊や人的つながりの著しい変化を否定し、本件土地の使用収益をするのに足りるべき期間の経過を否定する事情としては不十分というべきである。」とした。