「まかせる」遺言の効力

1.「相続を全てまかせる」旨の遺言について、包括遺贈する趣旨のものであると解された事例(大阪高裁平成25年9月5日判決・判時2204号34頁)

2.訴外Aは、「私が亡くなったら財産については、私の世話をしてくれたXに全てまかせますよろしくお願いします」との自筆証書遺言をした。

3.一審は、本件遺言はAの預貯金の払戻し等の手続を行い、財産の所在を最も良く把握しているXに対し、遺産分割手続を中心となって行うよう委ねる趣旨であると解するのが相当であると判断した。

4.本判決は、本件遺言書作成当時の事情及び亡Aの置かれていた状況に鑑みると、本件遺言は、亡Aの遺産全部をXに包括遺贈する趣旨のものであると理解するのが相当であると判断した。
 本件と同様に、「財産全部をまかせます」という文言が問題となった事案について、東京高裁昭和61年6月18日判決・判タ621号141頁は、遺贈の意思を否定している。

5.本判決は、Xが原告、被控訴人(被告)をY銀行とし、さらに、他の相続人Bが被控訴人補助参加人となっている。

6.【理由の要旨】
(1) このような本件遺言書作成当時の事情及び亡Aの置かれていた状況にかんがみると、本件遺言は、参加人Bが主張するような遺産分割協議を委ねるという意味であるとは考え難く(本件遺言が遺産分割手続をすることを控訴人に委ねる趣旨であるとすると、そもそもそのような遺言は無意味である。)亡Aの遺産全部を控訴人に包括遺贈する趣旨のものであると理解するのが相当である。

(2) 前遺言書が一定の法律知識を有する者(C)が関与してなされたものであること、本件遺言書は、93歳で体調も決して良いとはいえなかった亡Aが自ら作成したものであることからすると、前遺言書に「相続させる」という表現が使用されていることをもって、亡Aが「相続させる」との表現と「全てまかせます」との表現との法律的意味の違いを認識し、本件遺言においては、「相続させる」と区別して「全てまかせます」という表現を使用したと推認することができるとは到底いえない(一審は逆の形式的な判断)。