有期労働契約の期間満了時における無期労働契約への転換(最判平成28年12月1日判タ1435号89頁)

1 判決要旨 
私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約は、?当該労働契約において、3年の更新限度期間の満了時に労働契約を期間の定めのないものとできるのは、これを希望する教員の勤務成績を考慮して当該大学を運営する学校法人が必要であると認めた場合である旨が明確に定められており、当該教員もこのことを十分に認識した上で当該労働契約を締結したものとみることができること、?大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていること、?当該学校法人が運営する三つの大学において、3年の更新限度期間満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった教員も複数に上っていたことなど判示の事情の下においては、当該労働契約に係る上記3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえない。
2 原審
 Y(私大)の認識や契約職員の更新の実態等に照らせば、採用当初の3年は試用期間であり、特段の事情の無い限り、無期労働契約に移行するとの期待に客観的な合理性がある、などとして本件労働契約が平成26年4月1日(3年の更新期間満了時)から無期労働契約に移行したと判断し、Xの請求を全部認容した。
3 検討
(1)本件では、XY間で締結された期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に無期労働契約となったか否かが争われている。
(2)原判決は、雇止め法理又は労働契約法19条2号の判断枠組みを無期労働契約への転換の場面に借用したものと捉えることが可能であるが、そもそも雇止め法理は有期労働契約の更新の場合に適用されるものとして形成、確立されてきたものであり、これを利益状況の大きく異なる無期労働契約への転換の場面に直ちに借用できないことは明らかである(櫻井裁判官の補足意見)。
(3)雇止め法理は、有期労働契約の更新の場合に適用されるものとして形成、確立されてきたものであり、本件のような有期労働契約から無期労働契約への転換の場合を想定して確立されたものではないことに原審が十分留意して判断したのか疑問である。
(4)無期労働契約への転換は、いわば正社員採用の一種という性格を持つものであるから、本件のように有期労働契約が試用期間的に先行している場合にあっても、なお使用者側に一定範囲の裁量が留保されているものと解される。