破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合における、破産手続開始時の債権の額を基礎として計算された配当額のうち実体法上の残債権額を超過する部分の配当方法(最三小決平成29年9月12日判タ1442号52頁)

1 破産債権者が破産手続開始後に物上保証人から債権の一部の弁済を受けた場合において、破産手続開始の時における債権の額として確定した物を基礎として計算された配当額が実体法上の残債権額を超過するときは、その超過する部分は当該債権について配当すべきである。

2 超過部分の取扱い
(1)超過部分は求償権者に帰属すべきものであるが、破産手続においては超過部分も含めて債権者に配当した上で、求償権者の債権者に対する不当利得返還請求による処理に委ねるとの見解
(2)超過部分は求償権者に帰属すべきものであり、求償権者に配当するとの見解
(3)超過部分は破産財団に帰属すべきものであるとの見解

3 本決定は、まず、破産法104条1項及び2項の趣旨について、上記各項は、複数の全部義務者を設けることが責任財産を集積して当該債権の目的である給付の実現をより確実にするという機能を有すること(最三小判平成22年3月16日判タ1323号128頁参照)に鑑みて、配当額の計算の基礎となる債権額と実体法上の債権額とのかい離を認めるものであり、その結果として、債権者が実体法上の債権額を超過する額の配当を受けるという事態が生じ得る事を許容しているものと解されると判示した。
 この見解からすると、超過部分は破産財団に帰属すべきものであるとの見解)前記(3))は採用できない。

4 本決定は、次に、破産法104条3項ただし書及び4項の趣旨からして、債権者が破産手続開始の時において有する債権について破産手続に参加している場合、債権の一部を弁済したにとどまる求償権者は、求償権又は原債権を破産債権として行使することはできない旨を判示した。この理解からすると、超過部分を求償権者に配当するとの見解(前記(2))は採用できないこととなる。

5 本決定は、超過部分は求償権者に帰属すべきものであるが、破産手続においては超過部分も含めて債権者に配当した上で、求償権者の債権者に対する不当利得返還請求による処理に委ねるとの見解(前記(1))を採用することを示したものと解される。この見解は、簡明であって破産手続の円滑で迅速な処理に資するものであるといえる。実務上は、破産管財人が超過部分の存在を認識した場合、債権者に対し、超過部分の配当請求権を求償権者に譲渡するよう促すことになるものと考えられる。