供託金の支払(取戻・還付)

1.賃料の増減額の事件の和解で、供託金の還付がされていない場合において、
 一方当事者が供託金の払渡しを受ける合意がされる場合がある。

2.供託は、被供託者が受諾の意思表示をするまでは、実体法上供託者・被供託者双方に、
 供託金の払渡請求権(取戻請求権、還付請求権)がある(民法496条1項、
 供託法8条2項・供託規則 25条、供託法8条1項・供託規則24条)。
  そのため、一方の払渡請求権の存在を確認することが、他方の請求権の不存在を確認
 することにはならず、供託金取戻請求権の行使に合意する趣旨ないし供託金還付請求権
 の行使に合意する趣旨を明らかにした条項であることを要する。

3.また、取戻権は供託所又は被供託者に対する意思表示により放棄することができる
我妻栄・新訂債権総論315)。
  下記5の条項例?は、供託者が被供託者の還付請求権を行使することを合意したもの
 であり、これにより被告の取戻権は消滅する。

4.なお、払渡手続きにつき、払渡請求者は、供託金払渡請求書に払渡しを受ける権利
 を有することを証する書面を添付する必要がある(供託規則24条、25条)ところ、
 上記2の合意の条項のある和解調書の正本等は、この添付書類となる場合もある
(供託法入門338以下参照)。

5.条項例
 ?供託金の還付請求権行使への合意
   原告及び被告は、被告が本件建物の賃料として、○○法務局に平成○○年○月分から
  平成○○年○月分まで1か月○円ずつ供託した金員について、原告が還付請求するものとし、
  被告はこれを承諾する。

 ?供託金の取戻請求権行使への合意
   原告は、被告に対し、被告が本件建物の賃料として○○法務局に平成○○年○月○日
  から平成○○年○月○日まで1か月〇円ずつ供託した金員を被告が取戻すことに同意する。