譲渡禁止の特約

◇ 譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は、債務者に譲渡の
 無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない
 限り、その無効を主張することは許されない。(最判21.3.27金法1870-44)


1 原告が、被告に譲渡した請負代金債権には譲渡禁止特約が付されていた
 から、上記債権譲渡は無効であると主張して、被告に対し、債務者が
 債権者不確知を原因として供託した供託金の還付請求権について原告が
 同請求権を有することの確認を求めたもの。


2 原審は、本件債権譲渡は無効であり、その無効を主張できるのは債務者
 だけであると解することはできないとして、原告の本訴請求を認容。


3 譲渡禁止特約は債権の譲渡性を物権的に奪うものであり、特約に反し
 てされた譲渡は無効であるが、善意の第三者に対しては譲渡禁止特約
 による譲渡性の欠缺をもって対抗することができないとするのが通説。
  判例も明示的な判示をしていないが、この説に立つものと理解されて
 いる。
  物権的効力説を採った場合、無効の効果を誰もが主張し得るものと
 解するのが原則的な考え方であるように思われるが、無効について相対
 的無効ないし取消的無効という考え方を認めるのが通説であると言われて
 おり、判例も、錯誤無効については、第三者による無効主張を制限する
 立場を採っているのであって、譲渡禁止特約に反する債権譲渡について
 も、誰を保護するために無効とされているのかという法の趣旨を考慮して、
 無効の主張権者の範囲を限定して解釈することも可能である。
  譲渡禁止特約に反する譲渡の効力については、相対的無効ないし取消的
 無効とされるものの特徴が多く備わっており、主張権者の範囲についても
 法の趣旨が債務者保護を目的としていることからすると、債務者に無効
 を主張する意思がない場合には、原則として、他の者が無効を主張する
 利益はないものと解することができる。