民事再生手続におけるリース契約の処遇(最三判H20.12.16(NBL907-67

1 事案の概要
  本件解除特約に基づき、本件リース契約を解除する、未返還のリース物件
 の引渡しと約定損害金の支払いを求めた事案である。


2 従前の議論と本件の争点の位置づけ
 ① リース契約の法的性質・・最二判H7.4.14が金融契約説。
  少なくともフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約は、倒産手続
 においては、賃貸借のような双方未履行の双務手続ではなく、担保を伴う
 金融債権(更正手続では更正担保権、再生手続では別除権付再生債権)の
 設定。

 ② 規定損害金はリース料の残債権の性格(金融債権の性格)が強いが、
  約定損害金は物件の使用損害金(いわば賃料相当損害金)である。


3 本件解除特約の効力
 ① 民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に
  応じた対応をする機会を失わせるから無効(判旨)。
 ② 民事再生法では、担保権は別除権として、再生手続によらないで
  行使できることから(同法53条2項)問題となる(論点)。
 ③「リース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせる」ことを無効
  の理由とする意味は、担保権の実行手続の中止命令(民事再生法31条)を
  得た上で、リース債権者との間で、「別除権協定」を締結するという
  実務の運用の機会を失わせることなどを想定してのものと考えられる。


4 特に担保権実行中止命令(民事再生法31条)が、リースのような非典型
 担保にも適用があるかについては、議論があったが、本件判決は、これを
 認めた初の最高裁判決である。


5 本件判決の射程を、いわゆる倒産解除条項に限定した。さらに、田原補足
 意見は、期限の利益損失条項の効力は一般に否定されないと明言する。
  破産法58条5項(民事再生法51条が準用)が、期限の利益喪失条項に
 基づく相殺予約ともいえる、いわゆる一括清算ネッティング条項の有効性
 を立法的に認めたことも背景にあろう。しかし、破産法58条の規定する
 金融派生商品のネッティングについては国際金融実務の観点から例外的に
 立法で認めたものとも解されるのであって、それ以外の取引類型における
 期限の利益喪失条項については、相殺権という担保を特別に保護する合意
 であるという意味で、「一債権者と債務者との間の事前の合意により、民事
 再生手続開始前に債務者の責任財産を逸出させ」るという本判決の理由づけ
 によって無効とされる余地があるのではないかとの疑問がある。


6 田原補足意見は、再生債権の弁済は禁止されるが(民事再生法85条1項)
 再生債務者は、期限の利益喪失条項によって、リース料全額につき債務
 不履行となり、担保権実行手続の中止命令(同法31条1項)を得ない限り、
 債務不履行解除が可能になると判示する。
  再生手続開始決定の弁済禁止功(同法85条1項)は、保全処分の弁済
 禁止功(同法30条1項)よりも効力が弱いと解するのであろう。
  再生手続開始決定が発令され、弁済禁止功(同法85条1項)が生じた後
 の履行の遅滞についても、同様に、解除権を行使できないと考えるべきで
 はないか。
  以上のような理由で、上記田原補足意見には疑問を感じざるを得ない。