1.本件建物について、期間を10年間、賃料月額2100万円とする定期建物
賃貸借契約を締結し、保証金として2億円を支払った。同契約には、
保証金について賃借人が自己都合で賃貸借期間内に解約又は退去する場合
は、保証金は違約金として全額返還されないものとするとの条項が、
また、中途解約について原則として中途解約できないこと、賃借人のやむ
を得ない事由により中途解約する場合は、保証金は違約金として全額返還
されないものとするとの条項(以下「違約金条項」という。)が、原状回復
について、賃借人は、本件建物を原状に回復して賃貸人に明け渡さなけ
ればならないとの約定がある。
2.原告は、本件違約金条項は、破産法53条1項の破産管財人の解除権を
不当に制約するとか著しく正義公平の理念に反し、公序良俗に反する
などということを理由に無効であることを前提として、保証金は敷金
としての性質を有しており、Xが預託した保証金2億円から、原告が
本件建物を返還した時点において、被告がX及び原告に対して有する
全賃料債権及び原状回復費用を控除した残金の保証金返還請求をした。
3.本件違約金条項は、賃借人側の事情により期間中に契約が終了した場合
に、新たな賃借人に賃貸するまでの損害等を賃借人が預託した保証金に
よって担保す趣旨で定められたものと解するのが相当である。
4.前記のとおり本件違約金条項が当事者間の自由な意思に基づいて合意
され、その内容に不合理な点がない以上、破産管財人においても、これに
拘束されることはやむを得ないと解すべきであるから、本件違約金条項
が破産法53条1項に基づく破産管財人の解除権を不当に制約し、違法
無効であるとはいえない。(東地判H20.8.18 判タ1293-299)