1.建築基準法42条1項5号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている
道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、
右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれ
があるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益
を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して
右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)
を有する。(最判H9.12.18)(判タ959-153)
2.道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することが
できるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害
された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則である。
3.生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、
これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通に
ついての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった
通行に関する利益は私法上も保護に値するというべきである。
4.道路位置指定に伴い建築基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った
道路敷地所有者は、少なくとも道路の通行について日常生活上不可欠の利益
を有する者がいる場合においては、右の通行利益を上回る著しい損害を被る
などの特段の事情がない限り、右の者の通行を禁止ないし制限することに
ついて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私法上の通行受忍義務
を負うことになってもやむを得ないものと考えられるからである。