1 居住用の賃貸マンションにおけるいわゆる敷引特約および更新料
特約が消費者契約法10条により無効となるか。
2 事案の概要
賃料月額5万8000円、保証金35万円、更新料として11万6000円
保証金に関し、解約の際には解約引きとして保証金から35万円を差し
引く旨の特約。賃貸借契約の終了に基づき保証金30万円および不当
利得返還請求権に基づき支払済みの更新料相当額11万6000円の返還
を求めた。
3 敷引
被告が主張する法的性質(①自然的損耗料、②リフォーム費用、
③空室損料、④賃貸借契約成立の謝礼、⑤当初賃貸借期間の前払賃料、
⑥中途解約権の対価)およびその合理性はいずれも認めることが
できない。
4 本件更新料の法的性質(①更新拒絶権放棄の対価、②賃借権強化
の対価、③賃料の補充、④中途解約権の対価)およびその合理性に
ついてはいずれも認めることができない。
5 ある消費者契約条項が法10条に該当し無効といえるかの判断は、
まず「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項」
であるか(同条前段)を検討し、次に、当該条項の適用により信義則
に反して消費者の利益が一方的に害されることになるか(同条後段)
を検討するという枠組みで行われる。
6 「消費者の利益を一方的に害する」ことの判断である。
「消費者と事業者との間にある情報、交渉力の格差を背景として不当
条項によって、消費者の法的に保護されている利益を信義則に反する
程度に両当事者の衡平を損う形で侵害すること」とされている。