賃貸マンションの敷引特約、更新料特約の効力(NBL911-6)

1 居住用の賃貸マンションにおけるいわゆる敷引特約および更新料
 特約が消費者契約法10条により無効となるか。


2 事案の概要
  賃料月額5万8000円、保証金35万円、更新料として11万6000円
 保証金に関し、解約の際には解約引きとして保証金から35万円を差し
 引く旨の特約。賃貸借契約の終了に基づき保証金30万円および不当
 利得返還請求権に基づき支払済みの更新料相当額11万6000円の返還
 を求めた。


3 敷引
  被告が主張する法的性質(①自然的損耗料、②リフォーム費用、
 ③空室損料、④賃貸借契約成立の謝礼、⑤当初賃貸借期間の前払賃料、
 ⑥中途解約権の対価)およびその合理性はいずれも認めることが
 できない。


4 本件更新料の法的性質(①更新拒絶権放棄の対価、②賃借権強化
 の対価、③賃料の補充、④中途解約権の対価)およびその合理性に
 ついてはいずれも認めることができない。


5 ある消費者契約条項が法10条に該当し無効といえるかの判断は、
 まず「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する条項」
 であるか(同条前段)を検討し、次に、当該条項の適用により信義則
 に反して消費者の利益が一方的に害されることになるか(同条後段)
 を検討するという枠組みで行われる。


6 「消費者の利益を一方的に害する」ことの判断である。
 「消費者と事業者との間にある情報、交渉力の格差を背景として不当
 条項によって、消費者の法的に保護されている利益を信義則に反する
 程度に両当事者の衡平を損う形で侵害すること」とされている。