東京家庭裁判所家事第5部 (遺産分割専門部) における遺産分割事件の運用 (判タ1374−54)(1276-56)

一、
1 特別受益としてしばしば問題とされる点
2 「生計の資本」としての贈与か否かが問題となるもの
3 「不動産の無償利用」
(1) 通常,使用借権の設定が,特別受益にあたる。

(2) 当該土地が収益物件に当たり,これを第三者に賃貸し,賃料を得ていたはずであるという証明がなされない限り,地代相当額が特別受益となることはなく,設定を受けた使用借権そのものを評価することとしている(更地価格を基準にその割合を判断することとなろう。)。

(3) 建物の無償使用は,通常,恩恵的性格が強く,経済的価値も低いため,生計の資本としての贈与にはあたらない。


4 「継続的な金銭援助」
(1) 被相続人の意思により,被相続人の預金口座から払戻しを受けている場合,それが少額なものである限り,生計の資本としての贈与に当たることはない。少額であっても,それが相当長期間にわたり,その合計金額が多額となった場合には,生計に資本としての贈与に当たる余地が生ずる。

(2) 持戻しの免除の黙示の意思表示が認められる余地もある。


5 「生命保険金」
(1) 保険金額が遺産総額の6割を超えるような場合は,持戻しの対象となると判断される可能性が高くなるであろう。

(2) 受益者の範囲が問題となるもの…代襲相続,第2次相続がある場合
代襲相続の場合,代襲原因が発生する前に,代襲相続に対して特別受益に該当するような贈与があったとしても,それは,通常,持戻しの対象とならず,代襲原因が発生した後に特別受益に該当するような贈与があった場合には,持戻しの対象となると考えられる(通説)。これに対し,被代襲者に対する特別受益は,原則として,代襲相続が持戻しの義務を承継すると考えられる。


二、書式
1 寄与分の主張を検討する皆様へ
2 寄与分主張のポイント
3 寄与分主張整理票
(1) 時期
(2) 寄与行為
(3) 因果同案(維持・増加)
(4) 対価の有無
(5) 証拠資料