1 父の相続に際し,母が相続放棄をし,子に相続財産をすべて
相続させた後,子が死亡して,母と子の妻が共同相続人となった場合,
子の相続において母は先にした相続放棄を寄与として主張することが
許されるのか否かという問題。
2 原則として,寄与分を否定することが相当であるが,
(1)先行相続における共同相続の類型(→4)
(2)相続放棄の理由又は動機,(→4,5)
(3)先行相続から後行相続までに経過した期間などを考慮して(→5)
寄与分を肯定できる場合もある。
3 積極説の場合の算定方式
寄与分=相続放棄当時の相続分の評価額×貨幣価値変動率×裁量割合
4 理由又は動機には様々なものがあり得るから(例えば,被相続人の家業を
承継することを嫌ったり,生前贈与を受けているために具体的相続分がな
かったような場合もあり得る。)
5 母親の相続放棄が,子によって扶養されることを期待し,相続分の譲渡に
代えてなされたものであるときは,原則として,先行相続における母親の
相続放棄が特別の寄与であることを肯定して差し支えない。
しかし,父親の相続から子の相続までに長期間が経過している場合には,
放棄した相続分全部を寄与分と認めることは相当ではない。