再転相続

1 被相続人Xが死亡し、その相続が開始された後、共同相続人の一人であるAが死亡し、第二次的な相続が開始した場合、Aの地位をその相続人が当然承継し、Aの相続人が被相続人Xの相続人として、遺産分割手続に加わる。このような場合を再転相続という。


2 Aが相続承認か放棄かが未定であるうちに、Aが死亡して第2の相続が開始した場合を「純粋な意味での狭義の再転相続」と呼び、Aが被相続人Xの相続を承認した後にAの相続が開始した場合を「広義の再転相続」と呼ぶ。


3 調停又は審判手続の途中で共同相続人の一人であるAが死亡した場合には、Aの相続人が調停及び審判の当事者となったことを明確にするために、受継手続を執る(家審規15条)


4 遺産分割調停及び審判においては、いったん手続が開始された以上、手続は、職権で進められるべきであり、当事者が死亡したことによって中断しないと解されている。


5 再転相続人は、第1次の相続の相続人が被相続人に対して有していた相続分を承継するのであるから、相続人が特別受益を受けていたのであれば、再転相続人の相続分を算出する際にこれを考慮する。


6 最決平17.10.11(判タ1197号100頁)
第1次の相続の被相続人Aが死亡してその相続が開始し、Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始した場合(第2次相続)、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を所得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。


7 例えば、被相続人が子Aの子C(孫)に贈与をして死亡し、A及びその兄弟姉妹が相続した後に、Aが死亡して、Cが被相続人の相続人となった場合、Cが被相続人から贈与された財産は、特別受益となるのかが問題となる。
被相続人の相続開始時(この時点では、Aは生存中)以前において、被相続人からCへの贈与がなされていたとしても、相続人以外の者に対する贈与として、特別受益には当たらないとするのが基本である。
被相続人からCへの贈与が実質的にはAに対する贈与であるとしてAの特別受益であるとされる場合は、Aの死亡によってCはAの地位を引き継ぐのであるから、Cへの贈与が特別受益として計算されることになる。


8 第2次被相続人に固有の財産はなくても、第1次被相続人の遺産についての第2次被相続人の取得分につき分割協議ができない限り、第2次被相続人についての遺産分割事件を別個に立件して、主文において第1次相続と第2次相続のそれぞれについて分割の審判をするのが、いわゆる遺産説に立つ最決平17.10.11の判示に沿うものといえる。


9 他方、第2次被相続人に固有の財産がない場合には、第2次被相続人へ帰属させる第1次被相続人の遺産を具体的に特定せずに割合的な帰属に止め、第2次被相続人からの特別受益がある場合にはこれによる修正を加えたうえで最終的に計算される再転相続人の相続分割合に従って一括分割することも、裁判所の裁量権の範囲内の処理として許されると解されている。