遺留分減殺と相続分指定、持戻し免除

1. 遺留分減殺請求により相続分の指定が減殺された場合には、遺留分割合を超える相続分を指定された相続人の指定相続分が、その遺留分割合を超える部分の割合に応じて修正される。


2. 特別受益に当たる贈与についてされた当該贈与に係る財産の価額を相続財産に算入することを要しない旨の被相続人の意思表示が遺留分減殺請求により減殺された場合、当該贈与に係る財産の価額は、上記意思表示が遺留分を侵害する限度で、遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、当該贈与を受けた相続人の相続分から控除される。(最高裁平24.1.26決定)(判タ 369-124)


3. 本件の事実関係の下では、本件相続分の指定を減殺しただけでは、原告らの遺留分を確保することができないことを指摘し、本件遺留分減殺請求は、本件持戻し免除の意思表示を減殺する趣旨を含むものと解した上、特別受益に当たる贈与についてされた持戻し免除の意思表示が遺留分減殺請求により失効した場合の具体的相続分の算定方法につき、持戻し免除の意思表示が失効する限度で、上記贈与に係る財産の価額が遺留分権利者である相続人の相続分に加算され、上記贈与を受けた相続人の相続分から控除されるものと解するのが相当であるとした。


4. 被相続人の包括的な財産処分行為に対して遺留分減殺請求がされた場合の効果については、最判平8.1.26が、財産全部の包括遺贈に対して遺留分減殺請求がされた事案において、遺留分減殺請求によって遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない旨を判示している。


5. 平成8年判決によれば、遺留分減殺請求後の共有関係の解消は、共有物分割によることになる。


6. 平成8年判決の考え方は、相続分の指定には及ばず、相続分の指定に対して遺留分減殺請求がされた場合には、指定相続分の割合が修正されるにとどまり、遺留分権利者に帰属する権利は遺産性を失わず、共有関係の解消は、遺産分割手続によるべきであるとする見解が多数を占めている。


7. 本決定は、相続分の指定の性質に鑑み、相続分の指定に対して遺留分減殺請求がされた場合には、遺留分権利者に帰属する財産は遺産性を失わず、指定相続分の割合が修正されるにとどまるとする多数の見解を前提に、平成10年判決と同様の考え方から、決定要旨1のとおり判示したものと考えられる。